今宵、甘美なる時をA※
日課であるトレーニングを終えて、二度目のシャワーを浴びる。ハイパーオーツが加工されたいつもの食事を口にしながら、テレビを付けてニュースを眺めた。
特に目立った事件や事故などは取り上げられていない。この街が、国が、平和であるという証拠だ。
シビュラシステムに飼い慣らされた人間たちが、すべてをシステムに委ねて息をするこの時代。改めて考えただけで虫唾が走る思いがした。
ユリがリビングにいないところを見ると、買い物に出ているのか散歩に出ているのか。一番可能性が高いのは、映画でも見ながら眠ってしまったかだろう。
ベッドルームのドアを開けてみると、案の定すやすやと寝息を立てている彼女がいた。ノートサイズの携帯端末が傍に置かれているところを見ると、僕の予想は的中したらしい。
あどけない寝顔をじっと眺めているうちに、僕は昼間の彼女の行動を思い出した。珍しくユリからキスをしてくれたっけ。
「…ユリ」
彼女のそばに腰掛けて、頬にそっと触れてみる。それからつつ、と首筋に触れて、いかにも柔らかそうな太ももを撫でてみる。
「ん、」と身動ぎをしたけれど起きる気配はない。
僕はシャツを捲し上げてそこらに放り、半裸になる。そしてユリのルームウェアのファスナーを、上からゆっくりと下へ下げる。
ジジ…という音とともに、ユリの下着が露わになった。形のいい両胸に思わず吸い寄せられる。
音を立てて胸元にキスを落とし、片方の手で形を楽しむように軽く揉んでいると、さすがに彼女は目を覚ましたようだった。
「んん、…ま、槙島さんっ?!え?!な、何して…」
「見ての通りだよ。君に触れてる」
背中に手を回して、ブラのホックを外してやる。下着を取り払うと、ユリの白い肌が薄闇に浮かび上がった。
「ゃ、待って…恥ずかし…、」
「それは難しいな。僕はもうスイッチが入ってしまっているから」
胸の先端を口に含んで何度も吸い上げる。その度に小さく震える彼女が愛おしかった。
「…ねぇユリ、もう一度君からキスをしてくれないかな。あれは嬉しかった」
「え…っ、い、今ですか…?」
「そうだね。ほら、昼間みたいにしてごらん?」
ぐ、と顔を近づける。
ユリは困ったように眉根を下げながら視線を宙に泳がせている。
よほど恥ずかしいのか、どんどん顔が真っ赤になっていく姿がたまらない。
「してくれないのかい?…残念だな」
「ぁっ、待って…!」
加虐心に煽られるまま、僕はユリのショートパンツをするりと脱がせた。
ぎゅっと閉じた足を無理矢理開かせて、太ももを厭らしく撫でていく。ショーツの上から触れただけでも、そこは濡れていることがわかる。
下着の隙間から指を滑り込ませて入り口を数回さすっただけで、ちゅくちゅくと卑猥な音を立てた。
「ぁ、ん…っ、やぁ…」
「嫌なのかい?こんなに濡れているのに?…もっと触れて欲しい、の間違いじゃないかな」
ずぷ、と音を立てて中指を飲み込むユリの中心。これなら二本も軽くいけそうだと思い、人差し指も追加した。
「っあ…ッんん…、やっ…」
それを前後に動かしてやると、ユリの嬌声が次第に大きくなっていく。
…ああ、この声。どうして彼女の声はこんなにも、僕の欲望を掻き立てるんだろう。
「…はぁ、はぁっ…、槙島さん、もう…」
「欲しい?」
潤んだ瞳で僕をじっと見る彼女の瞳は、間違いなくそれを望んでいる。けれど簡単にくれてやるほど僕は優しくない。
「じゃあ、してごらん。ほら」
「…ッ」
今にも泣き出しそうなユリ。
すこし意地悪すぎるだろうか、とも思ったけれど、僕はどうしても彼女からのキスが欲しかった。欲しいものは手に入れるのが僕の信条だ。
「…目、つむってください…」
「ん。わかった」
「………」
視界が暗闇に覆われてから数秒後、頬に軽く手を添えられる感触のあと、柔らかいものが唇に触れたのを感じた。
そっと目を開けてみると、頬を染めたユリの顔がすぐそこにある。
「いい子だね、ユリ」
「んっ…」
僕からもキスを返す。
そして彼女のショーツを取り払い、膨張しきった自身を入り口にあてがった。
「ご褒美をあげよう」
先端を少し埋めただけでも、お互いの口から苦しげな息が漏れる。どうやら余裕がないのは僕だけではないらしい。
性急な動作で自身をすべて埋めると、間髪入れずそのまま腰を動かし始めた。
「…っん、ぁ、あぁっ、やぁ…っ!」
「ユリ…、ッは…」
快楽と欲望に突き動かされるまま、腰を打ち付ける。彼女の白くて細い身体がびくりと跳ねたのを見て、僕は動きをさらに速めた。
肌と肌がぶつかる音。
ベッドのスプリングが軋む音。
そしてユリの甘い声が、僕の鼓膜を心地よく震わせる。
「ッん、あ…!槙島さ、もう、私…っ!」
「…じゃあ、一緒にイこうか」
「んんっ…!」
彼女にぴったりと密着し、これでもかというくらいに深いキスを繰り返す。舌と舌が絡みたい、唾液と唾液が混ざりあう。
全身が快感に飲まれていく。
肌を打ち付けるスピードは緩めないまま、次第に高みへと登っていく。
「…ッ、」
やがて僕は彼女の中に白い欲望を吐き出した。
夜に沈んでいく、甘美なる時。
願わくば、これからも君と、ずっとー。
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