与えられた幸福
「…っん」
ユリの口から甘い吐息が漏れて、槙島は満足そうに目を細める。
唇の間から伸ばした舌を、ユリのそれに存分に絡ませてやると、彼女はいつもぴくりと愛らしい反応を返すのだ。
「…は…槙島、さん?」
上唇を軽く吸ってから、唇を離す。
するとユリは、どうしてやめるの、と言わんばかりに目を潤ませて槙島を見上げる。
互いの距離は限りなく詰めたまま、細くて長いその指先で、彼女の唇の輪郭をつつ、となぞっていく。
「…ユリの唇は、甘くてとても美味しそうだね」
「…」
「本当に、食べてしまいたいくらいだ」
指先をユリの口の中に差し込んでみる。
彼女は槙島の行動に驚いてわずかに目を見開いた。
「舐めてごらん。君の好きなようにしてもいい」
「…はず、かしい…」
「それができたら、またさっきみたいにしてあげるよ」
「……はい…」
恥ずかしさからユリは視線を逸らす。
そして躊躇いがちに舌先で槙島の指先をまんべんなくなぞっていく。
数回それを繰り返したところで視線が槙島に戻る。これくらいで良いかという疑問が込められた視線。槙島の答えはノーだ。
「…、っ」
その意志を汲んだユリは、さらに羞恥に顔を赤らめつつも、今度はちゅ、ちゅ、と音を立てて槙島の指先を吸い上げた。
舌先で指の腹を舐めながら、指の根本まで吸う事を繰り返していくうちに、槙島の指になんとも言えぬような快感が生まれていく。
賢明に指を口に咥えるユリの姿が、主人に飼い慣らされた小動物のように槙島の瞳に映っている。
「よくできたね、ユリ」
やがてその指先を引き抜き、ユリの唾液で濡れた指を、槙島は丁寧に舐めとった。
「いい子だ」
彼女の後頭部を引き寄せて、唇にかぶりつく。ん、とくぐもった声を上げ、槙島が与える刺激に思わず眉根を寄せるユリ。
この快楽はユリだけに与えるもの。与えて味を覚えさせ、他の選択肢なんてものは無くさせる。
自分だけを見ていればいい。
自分のものだけであればいい。
そのために必要な快楽は一通り与えるつもりだ。
「…気持ちいいかい?」
「ん、きもちい…」
うっとりとした表情を浮かべるユリがたまらなく愛おしい。
槙島は透明に微笑み、彼女の身体を緩く抱きしめた。
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