槙島聖護、と名乗った彼の指先が、私の身体の輪郭をゆるくなぞっていく。それと同時に温い舌先が鎖骨の辺りを這い、時折肌を吸い上げていく。


は、と甘い息が溢れる。
たった数時間前に初めて会った人間に裸体を晒す事など初めてだというのに、緊張はあっても不思議と恐怖はなかった。


片胸を柔く揉みしだきながら、もう片方の胸にキスを落としながら彼が囁くように言う。



「ソファでのセックスは初めてかい?」

「…ッ、はい」

「へえ。そうなんだ」

「ぁ…っ、」



胸の先端に強く吸いつかれて、びくりと身体が反応する。舌先で軽く潰されたり転がされたりを繰り返していくうちに、じわじわと快感が湧き上がっていく。



「ふ、ぁ…っ、槙島さん」

「聖護でいいよ。…ユリ」

「聖護さん…」



すがる場所が欲しくて彼の首に腕を回す。
すると彼は薄く笑い、口づけを降らせてくれた。

そのまま上半身を支えるようにしてソファに横たえられる。その際さりげなく肘掛けの部分にクッションを置いてくれた。


聖護さんの手が太ももを撫でていく。
外側から内側へ。
ーやがて中心へ。



「っ、待って、そこは…」

「ん?」



恥ずかしい、と言おうとしたけれど、それよりも先に聖護さんの指先が触れた。すでに濡れているそこを弄ぶように、水音を立てて愛撫を繰り返している。



「駄目じゃないだろう?こんなに感じているんだから」

「っ…」

「快楽に素直になることも、時には大事なことだと僕は思う」



聖護さんは、身に纏っていたセーターとシャツをソファの下に放り投げる。その細い外見からは想像もできないような引き締まった筋肉に、私は思わず息を呑んだ。



「ほら、言ってごらん。どうして欲しい?」

「っ…、そん、な」



聖護さんの指先が、入り口を摩るように動いている。刺激を与えすぎないよう、もどかしく感じさせるようわざとそうしているのが分かる。


妖しささえ感じさせるその瞳が真っ直ぐに私を見下ろしている。私のそこが快感を与えて欲しくて疼いている事なんて、彼はとっくに分かっているんだ。



「…ください」

「うん?聞こえないよ」

「もっと…、触って、ください…っ」



喉からやっとの思いで絞り出した言葉。
羞恥で目頭が熱くなり、涙で視界が潤む。

聖護さんは私の言葉を聞くと、満足そうに口角を持ち上げた。



「いいよ」

「!ぁあっ、ん」



不意に差し込まれた中指。
すぐに一定のリズムで出し入れを繰り返している。最初こそゆっくりだったけれど、次第に速さを増していく。



「んんっ、ぁ、はぁっ、あ…!」

「…ここだね」

「!やっ…だめ、っ…」



私の反応を逃さないようにしていたのだろう。弱いところをあっさりと見つけられてしまい、そこを容赦なく摩られる。


身体が跳ね、内側から何かが弾けてしまいそうになる。
思考が停止しそうになる前に、私はすがるように聖護さんの腕を掴み、動きを静止させた。



「…どうした?」

「も、おかしく、なりそう…っ」

「…君の恋人にこんな快感を与えられたことは?」



小さく首を振る。
彼はいつだって私の意思なんて無視だった。自分さえ良ければ良いという思考の持ち主だ。

何度もわざと声を上げて喘いだ。
そうしなければ不満そうな顔を向けられると、そう分かっていたからだ。



「なら、僕が与えよう」

「…?」

「情欲がもたらす快感というものを、ね」



ベルトを外し、スラックスを脱いだ。
自らの肌から下着をも手放すと、聖護さんは私の膝に手を当てて開かせ、そこに身体を割り込ませる。



「…ッん…!」

「はぁ…かなりキツイね」



めり、と音がするような錯覚を覚えるほどに大きいそれが、私の中へと入り込んでくる。ゆっくりと確実に。

全てが収まりきった時、全身が彼に侵されたかと思うほどにそこから熱がほとばしっていた。



「動くよ。…いいね?」

「…はい」



頷いて見せると、聖護さんは私に覆いかぶさってからゆっくりと前後運動を始めた。

最初こそ大きな異物感が中心にあるだけだったけれど、ゆるゆると何度か出し入れを繰り返すうちに、甘い痺れが背中に走るようになっていく。



「痛くないかい?」

「…大丈夫です」

「そう。それじゃ」



聖護さんは私の片足を肩にかけるようにすると、力強く最奥を突いた。ずし、とソファが沈む音。ぴりっと快感が走ったと思う間もなく、彼は激しく腰を打ちつけ始めた。



「はっ、ぁあんっ!やぁ…っ!」

「…ッ、は」



彼の口から甘い吐息が溢れる。
温まった室内で情事を行えば、お互いの身体は次第にしっとりと汗ばんでいく。

聖護さんの額にうっすらと浮かんだ汗を指先で軽く拭うと、彼は美しい微笑みを私に向けてくれた。




その後はただ快楽に溺れていくだけ。

何度も何度も彼が強く打ち付ける腰は、私をやがて絶頂へと導いていく。



「ぁあっ、ふ…、聖護さ……っ!」

「さあ、全身で僕を感じるんだ。…ユリ」



彼の宣言した通り。
私はやがて思考が停止するほどの快楽の渦へと飲み込まれていった。


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