純白の花10
「あ、あのあのあの、こういうこと、とは…」
説明の代わりにキスをすると、ユリは耳まで真っ赤になった。今しがた起こったことが信じられないようで、大きく目を見開いてこちらを見ている。
「そのままだ。他に何がある」
「そ、そのまま?」
「オイ、言わせるんじゃねぇ。なんのためにキスしたと思ってんだ」
「でも、その…意味がよく…」
どうやら本気で分かっていないらしい。
心の中で小さく舌打ちをしてから、俺は足を組んでベッドに腰掛けた。
「…嫉妬した。エルヴィンに」
「しっと…?」
「まさか嫉妬の意味が分からないとか言うんじゃねぇだろうな」
「も、もちろん分かります。でもどうしてエルヴィンさんに、リヴァイさんがやきもちを…?」
「そこまで説明させるとは、お前は本当に鈍感らしいな、ユリよ」
こんなことは今までになかった。
誰かに執着したり、独占欲を抱いたりすることなど。
今目の前にいる、ユリという一人の女をじっと見据えながら思案する。
…やきもち、か。
この歳になって誰かに嫉妬することになるとはな。
「口で分からねぇなら身体で教えてやろうか?」
「えっ?!かか、身体?!」
「そうだ。
考えてもみろ。俺はお前にキスをした。そして俺はエルヴィンに嫉妬した。ここまで言えばバカでも分かるだろうが」
「………」
「なぁ。…俺は」
自分の中でもはっきりとしていなかった感情。
あの日ユリに言おうとした言葉が、ようやく分かった。
「お前に惹かれたんだ」
兵団の命で向かった地下街。そこでたまたま見かけた女。運命なんて言葉信じちゃいないが、ユリと出会ったのはまさにそれだったんだと思う。
「……リヴァイさんが、私に…?」
「そうだ。こんなことはもう2度と言わねぇからな。覚えとけ」
「…で、でも、最近リヴァイさん、私のところに来てくれなかった…」
「ここ数日お前のところに行かなかったのは、単に調査で壁外にいただけだ。なんだ、寂しかったか?」
「!」
反応を見るとアタリだろう。
どうやら俺の一方的な片想いでもなさそうだ。
俺はベッドから立ち上がると、再びユリの目の前に立つ。その頭を軽く抑え、再び唇を押しつけた。
「…んっ、…」
今度は、さっきよりもずっと深く。
俺のものだと分からせてやるために。
「…さてユリ、お前はずいぶんと鈍感らしいからな。本音を聞かせてもらうとするか」
「ほ、本音って?」
「ほう。…これは調教のしがいがありそうだな」
「っ…ん、」
ユリの首筋に吸い付き、赤い痕を残す。
訳がわからない、というように身体を縮こませてこちらを見上げている様子が俺の情欲をかきたてる。
「夜はまだまだこれからだ。覚悟しろ、ユリ」
真っ白な花を俺の色に染めるのも悪くない。
そう思った。
Fin
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