こどものわがまま 後編※



ホテルに着いてチェックインを済ませる。
「泊まりでいいな」と聞かれて私は頷いた。

順番にシャワーを浴びて、2人でベッドに腰掛けている。白いバスローブを緩く纏った初めて見るその姿に、私の心臓は高鳴りっぱなしだった。



「何か食うか?」

「あ、いいえ。お腹は空いていません。リヴァイさんは?」

「俺もいい」



短く答えると、リヴァイさんは私の両肩に手をやり力を込めた。されるがままに押し倒されると、そのままリヴァイさんの綺麗な顔が近づいてくる。

…ああ、始まるんだ、と思った。



「…っ」



好きな人の唇が、私の唇を覆っている。
やわやわと上唇と下唇を食まれて、ぞわぞわと背筋が粟立った。これが、リヴァイさんの唇の味。

ぎゅ、と彼が着ているバスローブを握りしめると、それに応えるように私の頬に手が添えられる。怖くない、とでもいうように、優しく撫でられた。

そんなの、ずるい。




バスローブの紐を解かれ、するりと脱がされる。
鬱陶しいとでもいうようにそれらはベッド下に投げ捨てられ、私の下着姿が灯りの下にさらされる。

リヴァイさんも同じように纏っていたローブを脱ぎ捨てると、私に覆い被さった。



「ん、…っ」



下着越しに優しく胸を揉みしだかれる。
リヴァイさんには初めて触れられるのに、まるでこう触れれば私が気持ちがいいということを知っているかのようだった。

同時に首筋や鎖骨に唇を落としている。
唇の触れ方があまりにも優しくて、なんだか本当の恋人同士のセックスみたいだ、と思った。



次第にブラは取り払われ、リヴァイさんは胸の頂にちゅっと吸い付いた。唇で挟んで緩急をつけて吸われると、ぞくぞくと快感が走る。



「ん、ぁ…っ」

「ココが感じるようだな」

「は、はい…っ」

「もっと声を聞かせろ」



指先で頂を何度も弄ばれる。
膝を無意識に擦り合わせてしまい、それを見たリヴァイさんの指先が下着越しにそこに触れた。



「濡れてるな」

「見ないでください…っ」

「そいつは無理な話だ」

「…あ!」



ぐいっと下着に手をかけ、ずり下ろしていく。
完全に裸になった私を、リヴァイさんはじっと見下ろしていた。

その瞳がどこか優しい色を宿していて、私は驚いた。期待してしまうじゃないか、と心の中で文句を言う。


でも彼はきっと、昨日一緒にホテルに行った人も同じように抱いたんだ。同じように触れて、愛撫して、キスをして。

その光景を想像しただけで、心の中に鉛玉を落とされたような気持ちになった。






「ぁ…っ、んん…!」



毎日、綺麗だなぁと思って見ていたあの指が今、私の中で出し入れを繰り返している。自分でもわかるくらいにそこは濡れていて、少し指が動いただけでもくちゅくちゅと水音を響かせた。



「ゃ、ぁ…!リヴァイさん…っ」

「こんなに濡れてる。…なぁユリ、俺の指がそんなに気持ちいいのか?」

「…っ、はい…」

「俺が欲しいか?」

「…はい」

「そうか。いい子だ」



耳元で、少し掠れた声で囁かれる。
途端に好きという気持ちが溢れ出して、胸の奥がぎゅっとなった。


好きだ。
私はリヴァイさんのことが、大好きだ。



そっと足を開かされる。
硬く主張したモノが中心にあてがわれた瞬間、幸せとも悲しみともいえない、何か形容し難いものが、私を覆った。








行為を終えたあと、リヴァイさんは私の方を向いて寝転がった。



「ユリ。ずっと、俺に何か言いたいことがある様子だったな。ハッキリ言え」

「…」

「それとも俺に言えねぇようなことか?」

「…ずるいです、リヴァイさん」

「あ?何がだ」

「聞いたんです。昨日、会社の子と一緒にホテルに入ったって。誰とでも、こんなふうに寝るんですか?」



まずい。言葉にしていくうちに、悲しみがどんどん溢れて止まらなくなっていく。

声が震えて、言葉が詰まって、目頭がじわっと熱くなって。途端に溢れ出した涙が頬をつたい、枕に染み込んでいった。



「私はこんなに、リヴァイさんのことが好きで…、大好きで…仕方ないのに…」

「ホテルに入ったのは事実だ」

「!…」

「オイ、勘違いするな。アイツとホテルに入ったのは事実だが、寝たわけじゃねぇ。別々の部屋をとった」

「…?」

「残業しているうちに、互いに終電を逃したからホテルに泊まった。それ以上でもそれ以下でもない。信じられねえか?」

「…」

「他から聞いた話を信じて、惚れた男の話は信じられねえってのか。どうでもいい女を抱くほど、俺は落ちた人間じゃないつもりだがな」



リヴァイさんの手が伸びてきて、私の髪を撫でる。その目はさっき見た優しさを帯びていて、ああ、気のせいじゃなかったんだと思った。



「…信じます。誤解でした」

「ならいい。それで、お前は俺に抱かれて、そのあとどうするつもりだったんだ」

「それで…終わらせるつもりでした」

「さっきも言ったが、俺はどうでもいい女を抱くほど落ちちゃいねぇ。気持ちを素直に言うべきだと、俺は思うが?なぁ、ユリ」



口の端を少しだけ持ち上げて、リヴァイさんは笑った。その表情を見て、私の涙腺はとうとう止まらなくなってしまった。



「私だけのリヴァイさんに…なってください…」

「ハッ、まるで子供みてぇだな。…だが」



叶えてやるよ。
そう言ってリヴァイさんは、私の額に優しくキスをくれた。



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