想いは募れど




私には何もない。
秀でた才能もなければ、特技もない。

頭だっていいわけではないから、いい仕事につけたわけでもない。ただ花が好きだから、という理由だけで、下っ端としてこの花屋で働いている。



そんな私がどうして、リヴァイ・アッカーマンという存在に惹かれたのか。



彼はたまにこの花屋に足を運ぶ。
この店の扉をくぐる時の彼の表情はいつだって暗かった。

初めは「何故だろう」と疑問に思っていたが、すぐにその理由は分かった。



彼は、調査兵団の壁外調査の後にやってくる。
壁外調査は、毎回多大な犠牲を伴っているということをこの街に住む人間なら誰もが知っている。

彼はいつも、死者への手向けの花を求めてやってくるのだ。





「この花を頼む」

「かしこまりました」



白い花を包みながら、私はちらりとカウンター越しの彼の表情を見た。

近くにある商品の花を見てはいるが、その視界には何も映ってはいない。犠牲になった仲間の顔を思い浮かべているのだろう。



私は彼のことをよく知らないけれど、きっと「仲間思い」なのだと思う。

そうでなければ、花を買いに来ることもないだろうし、こんな表情はできないだろう。


丁寧とは言い難い言葉遣いとは裏腹に、そんな一面を併せ持つ彼に、私は少しずつ惹かれていった。




「…何をジロジロ見てやがる」

「はっ!すみません、つい…」

「つい、何だ?」

「いえ」



こっそり盗み見ていたつもりだったけれど、彼にはバレバレだったらしい。

慌てて視線を逸らして花を包み終え、代金を受け取ると私は花をそっと手渡した。



彼が花を求めてこの店に来る、この時間。
この瞬間だけが、私のような凡人が彼と関わることができるほんの短い時間だ。


そう思うと胸がちくりと痛んだ。
次会えるのはいつになるんだろう。




「いつもそんな顔をするんだな、お前は」

「え?」

「まるで捨てられた子犬みてぇな顔だ」

「こ、子犬?」



何故わかったんだろう。
胸の中をずばり言い当てられて、私は内心焦りを隠せなかった。



「安心しろ。…また来る」



そう言い残すと、彼は店を後にした。

彼が去ってしまって寂しいという気持ちと、私の心の中を察してくれて残してくれた言葉が嬉しい気持ちとが混ざり合う。


何も持たない私でも、彼を思い続けることは許されるだろうか。



「…リヴァイさん」



ぽつりと彼の名を呟くと、また想いが募ったような気がした。



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