純白の花3


調査兵団の兵長、リヴァイさん。
地下街で暮らす私ですら、聞いたことがある名前だった。

だから尚更に驚いた。
こんなひとがどうして、私を買ったんだろう。



買われたその時は、よくて雑用係、悪くて巨人の研究のための実験材料にでもなるだろうと思っていた。

けどリヴァイさんは私に部屋を与え、その上髪を切ってくれた。

業務がある時は別の給仕係の方が持ってきてくれるけれど、食事も部屋まで運んでくれる。

その度に少し私と話しては、部屋を去っていく。
その繰り返しだった。



「あの…リヴァイさん」

「なんだ」

「私…どうして、貴方に買われたんですか」

「あ?」



彼は椅子の上で大きく足を組んだ体勢で答えた。
リヴァイさんは、言葉遣いはやや粗暴で目つきも良いとは言い難い。



「くだらねぇ質問をするな。別に何か目的があってお前を買ったわけじゃねぇ」

「でも、普通…働かせたり、都合のいいように使ったりするものじゃないんですか?地下街ではみんながそうしていました」



奴隷にするため、臓器を売買するため、金稼ぎにするためなど、人買いの理由は様々あったしそれを見てきた。
故に特に何も命じないリヴァイさんには疑問しか浮かばない。



「なんだ、働きてぇのか」

「そういうわけじゃ…」

「…お前を買った理由、か」



リヴァイさんは腕を組み、何か思案しているようだった。けれどすぐに視線をこちらに向け、「自分でも理解できないこともある」と言葉を投げた。



「逆に俺が聞きてぇくらいだ。なんで俺はお前を買ったんだろうな」



じっと、鋭い瞳に見つめられ、どき、と心臓が音を立てたのを感じた。

そのまま彼は椅子から立ち上がり、ベッドに腰掛けていた私に歩み寄る。



「ユリ」

「…」



上から見下ろされ、思わず息を呑んだ。
リヴァイさんは少し屈んで私の傍に手をつく。


今までで一番近い距離。
リヴァイさんが纏うほのかな香りすらも、感じ取れるほどに。



どれくれいそうしていただろう。
目が合っている間、まるで時が止まってしまったかのように思えた。




「俺は…」

「…」

「…いや、なんでもない」



何かを言いかけて、リヴァイさんは私から離れた。

彼は背を向けてドアの前に立つと、「おやすみ」と一言だけ残して部屋を去っていった。



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