純白の花7



壁外調査の件についての話し合いは長引いた。
エルヴィンの案はいつも素晴らしいが、それに簡単に賛同できる兵士はそういない。覚悟が足りないからだ。


それゆえに反対意見も多く出る。
つい先ほど、それをねじ伏せるエルヴィンの熱弁でようやく会議が終了したところだった。



「…22時過ぎ、か」



時計を見て一人呟く。
考えてみれば今日は昼間からユリの日用品の買い出しに行った時、紅茶を飲んで以来何も口にしていない。さすがに空腹を覚える。







「あの…リヴァイさんっ」



食堂にでも赴こうかと考えながら歩いていると、不意に声をかけられた。

そちらを見ると、寝巻き姿のユリがそこにいる。



「なんだ。部屋の外に出てるなんて珍しいな」

「えっと…その、今から一緒に食堂に来ていただけますか?それともお忙しいですか…?」

「…いや。ちょうど今行こうと思っていたところだ」



ユリの食事なら、俺がいない時は給餌係に運ばせているから不自由ないはず。それなのに食堂に誘うなんて、小腹でも空いたのだろうか。


追求せずとも理由はすぐに分かるだろう。
そう思い、俺はユリと共に食堂に向かった。







「ここに座って待ってて下さい」



食堂に着くなり、言われるがままに席につく。
ユリはそのままどこかへ消えていったが、数分足らずで戻ってきた。



「あの、よかったら…これ、食べてください」



目の前に置かれたのは、パンに、湯気を立てたシチュー。シチューの中に入っている野菜は明らかに不恰好で、歪な形をしている。



「お前が作ったのか」

「はい。その…良くしてもらってるのに、何もできないのが嫌で。リヴァイさんがエルヴィンさんと一緒にお部屋を出て行ったあと、食堂の方にお願いして料理を教えてもらいました」

「…」

「料理なんて初めてで…。包丁なんて握ったこともなくて。でも、一生懸命作りました。その…もしおいしくなかったらごめんなさ…」



ユリの言葉を遮るように、スプーンにシチューを掬い取って口に運ぶ。

口の中で歪な野菜が転がったが、彼女が懸命に切ったものだと思えば不思議と素直に受け入れられる。



「悪くねぇ」

「!…ほ、ほんとですか?!よかったぁ…」

「ああ。初めてにしちゃ上出来だ」



本心だった。

日頃口にしている料理に比べれば味が劣るのは間違いないが、ユリが作った料理、と思えばそれ以上に美味いものだとすら思える。



「リヴァイさん?」

「…いや、なんでもねぇ」



少しわかったような気がする。
俺がユリを、買った理由ー。



ユリを横目にシチューを食べる手を進める。そんな俺の様子を見て、彼女はまた、花のように顔を綻ばせていた。



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