かつての恋心(前編)






中学時代の友人から「同窓会がある」との連絡があった。社会人になって半年。そういえばそんな話が出てくる頃なのかもしれない。

断る理由もないし、久しぶりに会いたい人たちもいる。だから私は二つ返事で行くことにした。


そこで私は、中学の同級生である和谷義高君と再会した。同窓会の会場である大衆居酒屋に、彼はスーツ姿で現れた。記憶の中よりもずっと大人びた彼の姿に心打たれるのを感じながら、私は少し離れた席からその姿を盗み見ていた。


「ねえ、ユリ」
「ん」


隣に座っている子が、私をつついた。
酔っているのか、顔が少し赤い。


「和谷君、カッコよくなってるね。びっくりしちゃった」
「…ホントにね」


私以外の人間もそう感じたらしい。
ということは、この同窓会に参加している他の子たちも少なからず同じ感想を抱いているのだろう。

半ば焦りを覚えながらも、私はカシスオレンジの入ったガラスを傾けた。アルコールが苦手であるが故に、ジュースのようなお酒を注文したのだけれど、それでもどくどくと血のめぐる音が頭に響いている。

やっぱり自分はお酒に弱いんだ、なんて考えながら再び和谷君へと視線を向けると、和谷君が私の視線に気が付いたのか、ばっちりと目が合ってしまった。


「っ!」


慌てて目を逸らす。
こっそり盗み見ていたのがバレてしまっただろうか。
どうしようかと視線を宙に漂わせていたけれど、向かいの席から「ユリ」と友人に声をかけられたお陰で、私は意識をそちらに向けることができた。




テーブルの上にあった料理もお酒もほとんど消えかかり、同窓会もすっかり終盤に差し掛かった頃。皆思い思いに移動し、お互いの近況報告に花を咲かせていた。

その様子をぼんやり眺めながら、そろそろ帰宅しようかと思っていた時、隣に誰かが腰を下ろす気配がした。


「よ、ユリ」
「……和谷君」
「久しぶりだな」


隣を見ると、すっかり大人びた表情の彼がそこにいた。身体つきもあの頃に比べてしっかりしているし、顔つきだって、幼さは残されているけれど、なんだか目のあたりが少し引き締まったような気がする。

けれど私を映すその瞳は、中学生の頃の和谷君そのままだ。私が何度も焦がれた、大好きなあの瞳。それが今目の前にある。


「髪、伸びたな」
「うん。伸ばしてるんだ」
「そうなんだ。似合ってるぜ」
「!…あ、ありがと」


さらりと褒められて、どきっとする。

…どうしよう。
中学の頃のあの想いがまた、蘇ってきてしまいそう。
結局告げることは叶わなかったけれど、私は和谷君の事が好きだった。好きで好きで、仕方がなかった。


「なァ」
「?」
「抜けないか?そろそろ帰ろうと思っててさ」
「そうだね。私も帰ろうと思ってた」


辺りを見ると、確かに少しずつみんなが帰り始めているのか、最初よりも人数が減っているのが分かる。

和谷君が立ち上がるのに倣って、私はカバンを持つとその場を立ち上がった。




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