11月11日



「天上院君!!僕とポッキーゲームをしようじゃないか!!」
「お、俺も俺も!」
「いや天上院君、僕とぜひ!!」


寮の窓から景色をぼんやりと見ていると、どこからかそんな声が口々に聞こえてきた。

見下ろしてみると、万丈目君を筆頭に、ポッキーを片手に持った男子生徒の群勢が明日香を追いかけているのが見えた。なんと言う事だろう。地獄絵図他ならない。


「…そっか、今日は11月11日かぁ」
「なんだ、なんの騒ぎ?」
「あ、ヨハン」


彼らがポッキーゲームと口々に叫んでいるおかげで、今日がなんの日か不意に思い出した。
すると部屋の中で寛いでいたヨハンが騒ぎを聞きつけたのか、ベランダに姿を現した。


「明日香と…万丈目や他の寮の生徒たちがいるな。みんなポッキー持って、何してるんだ?」
「私も今気づいたんだけどね、今日は11月11日でポッキーの日なんだよ」


私がそう言うと、ヨハンは、ああ、と納得したように頷いた。


「そういえばそんな日だったな」
「明日香、大丈夫かな…助けに行った方がいいかも」
「そうだな。…あ、十代だ」


そこら辺をブラブラ歩いていたらしい十代が、明日香と彼女を追う男子生徒たちと鉢合わせた。

そして明日香は縋り付くように十代の後ろに隠れたのだけれど、状況がよく分かっていない十代は「どうしたんだみんな?デュエルならいつでも受けて立つぜ」と呑気なセリフを吐いている。…明日香も苦労するなぁ。


「あれなら大丈夫だな。十代が負けるはずないし」
「そうだね、よかったぁ」


とりあえずは一安心。
そう思ってホッと息を吐くと、後ろからするりとヨハンの両腕が伸びてきて、緩く抱き締められた。


「っ、ヨハン…?」
「オレ達はしないのか?ポッキーゲーム」
「え、したいの…?」


あいにくポッキーは今、手元にない。
返事に困っていると、ヨハンは私の耳朶を甘噛みしながら言った。


「したいな。ユリと」
「ん…っ、ちょっと待ってヨハン、ここ外…っ」
「誰も見てないさ」


甘えるように私の耳朶から首筋に唇を滑らせて、チュ、と軽い音を立ててそこにキスを落とした。

びくりと肩が跳ねたけど、ヨハンはそんな私を見てくすりと笑って「可愛い」と言った。



「もうっ、誰かに見られたらどうするの!」
「見せればいいじゃないか。ユリはオレのだって」
「え…」


抵抗するために彼を振り返ったけど、それが逆手に取られた。ヨハンは私の手首を抑え、顎を掬い取ったかと思うとそのまま音をたててキスを繰り返した。


「ん…っ、は…もう、ヨハンってばっ」
「はは、悪い。少しやりすぎちった」


ゴメンな、そう囁かれて頭をぽんと撫でられると、とてもじゃないけど怒る気になれない。

別に怒ってる訳ではなかったけど、少しだけ困らせたくてそっぽを向くとヨハンは途端に慌てたようだった。


「ユリ、怒ったのか?悪かったって」
「…たら、許してあげる」
「え?」
「購買でポッキー買ってきてくれたら、許してあげる」


そう言って微笑むと、「分かった」と言ってヨハンは嬉しそうに私を抱き締めた。

一方外では、「ホラどんどんかかってこいよ!」という十代の元気な声が響いていた。

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