晴天はまどろみを連れて
「晴天」という言葉が似合いすぎるくらいの青空が広がっている。この学園の気候は今日も良好だ。
学園での生活はとても気に入っている。
けれどたまに、集団生活に疲れてしまうこともある。人として当然の事だと思った。
だから今日のお昼休みは食堂や寮で食べるのではなく、森に入った静かな場所でのんびりと食べようと思った。
寮の昼食で出されたサンドイッチを紙袋に提げて森に入り、ちょうど良さそうな場所を探す。こんな場所に誰か人なんている訳がない、と思いながら歩みを進めると、木の影に誰かの姿を見つけた。
「(…先客かな)」
意外に思いつつもそっと覗き見ると、木の根元に座り、幹に身体を預ける生徒の後ろ姿があった。その後ろ姿を見る限り、どうやら眠っているようだ。
…誰だろう。
起こしてはいけないと思いつつも好奇心が勝ち、私はそっとその人物の横に回り込んだ。そしてその姿を見下ろすと、留学生のヨハン・アンデルセン君だった。
なんで綺麗な寝顔だろう、と思う。
閉じられた目蓋から伸びる睫毛は長く、すっと通った鼻筋と、少しだけ空いている形がいい唇。
木漏れ日がそれらを照らし、時折そよぐ風が彼の髪を柔らかくなびかせている。
「(…寝顔、綺麗。それにかわいい)」
無防備なせいか、表情に少年らしさがより浮かんでいるのが窺える。写真にでも撮って残しておくべきなのでは、と思うくらいに心惹かれる光景だった。
「…ん」
「(あ、いけない。起きちゃった)」
慌ててその場を去ろうとする間もなく、ヨハン君は薄目を開けたあと、2.3度まばたきをしてからこちらを見た。
「あ、あのごめんね、盗み見してたわけじゃないの。誰がいるのか気になって見に来ただけで…」
「そうか。別に謝ることないさ」
完全に言い訳じみた私の言葉なんてさらりと受け流し、ヨハン君は「んーっ」と伸びをした。
「じゃ、私行くね」
「え?」
「お昼寝の邪魔しちゃ悪いし…」
それじゃ、と言い終わってくるりと踵を返したとき、左手首を掴まれたのを感じた。驚いて後ろを振り向くと、ヨハン君がこちらを見上げて笑っている。
「気、使わなくていいぜ。隣に座りなよ」
「…うん」
お邪魔します、と言っておそるおそる隣に腰掛ける。ヨハン君と同じように木に身体を預けて空を見上げると、眩しいくらいの青空が心を満たしてくれた。
温かい気候と、頬を撫でる心地いい風。そして隣には目を閉じてそれらを感じているヨハン君がいる。
ゆっくりと息を吸って吐く。なんて居心地がいいんだろう。…あれ、私、1人になりに来たんじゃなかったっけ。
「…いい風だな」
「うん。…そうだね」
そうだ。
目が覚めたら、持ってきたサンドイッチをヨハン君と一緒に分けて食べよう。
ゆっくりと目を閉じながら、そんな事を思った。
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