10 笑顔


そして次の日、授業を終えてお昼前になり、私は筆記用具や教科書を置きに寮に向かっていた。

昨日も結局夜の22時くらいまで、私とヨハン君は十代にみっちりと勉強を教えた。私が作った対策ノートは結構役に立ってくれたようで、十代が要点をすんなり飲み込んでくれたのが嬉しかった。


「(というか…十代は日頃からちゃんと授業を受けていれば絶対追試なんかにならないのに)」


いつも授業中に寝ているから勉強の内容についていくのが難しくなるのだ。

デュエルが楽しくて仕方がなくてそればっかりになってしまう気持ちも分からなくはないけれど、十代が留年してしまうのだけは絶対に嫌だった。


「…あれ」


ノートなどを部屋に置いて、寮の玄関口を出た先に見知った後ろ姿を見つけた。


「ヨハン君!」
「ああ、ユリ。ちょうどよかった、いま探しに行こうかと思ってたんだ」


私の声に気づき、笑顔で振り向いてくれた。


「昨日約束したからな。一緒に購買部へ行こう」
「わあ、ほんと?やったあ!」


私のドローセンスでは昨日のような悪夢を招きかねないけれど、ヨハン君ならいいパンを引いてくれるような気がする。私たちは並んで購買部へ向かった。




「オレが買ってくるから、ユリは食堂で待っててくれ」という言葉に従い、私は食堂へ向かう。そこにはお昼ご飯を食べる生徒がちらほら見受けられた。


もしかしたら十代も来ているかな、なんて思ってあの赤い制服を探したけれど、残念ながらその姿は見当たらなかった。

適当な場所を見つけて席に座ると、すぐにヨハン君がパンを抱えて現れた。


「お待たせ」
「ありがとう!あ、お金…」
「いいって。昨日夢のことで笑っちまったから、そのお詫びってことで」
「え、いいの?ありがとう…!」


お礼を言いながらパンを受け取った。


「開けてみろよ。当たりだといいな」
「うん!…いきます!」


自分で買った時とは違って不安はなかった。見守っているヨハン君の前で袋を開けると、私はパンを一口かじってそのままもぐもぐと咀嚼して飲み込んだ。


「どうだ?なんのパンだった?」
「………こ、これ…」
「ん?」
「美味しい…すごいよヨハン君!黄金の卵パン!私初めて食べた…!」
「おお!やったな!」
「んー、おいしい〜っ」


なんて感動的な味なんだろう。さすがは一日に一つしか収穫できない卵の味だ。私が今まで食べてきたハズレのパンたちとはレベルが違いすぎる。

パンの味を噛み締めていると、ヨハン君は机に肘をつきながらにこっと微笑んで言った。


「良かったよ。ユリの幸せそうな顔が見られてオレも嬉しいぜ」
「…っ」


そのあまりにも優しい笑顔に、胸がきゅっと音を立てたのを感じた。この感覚は昨日もあったものだ、と心のどこかで思う。


「…」
「ん?どうした?」
「…ううん、なんでもない」


十代と話している時とは違う、この胸の高鳴りは一体なんなんだろう。私はそんなことを考えながら、またパンを口に含んだ。

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