11 追試試験の日
そしていよいよ追試試験の日がやってきた。勉強を教えてくれと頼まれたのが一週間ほど前で、あれからほぼ毎晩ヨハン君と私は十代に勉強を教えてきた。
というわけで私は十代の追試試験の会場まで見送りにきたのだった。
「がんばってね十代!」
「おう!あれだけ勉強したんだからきっと大丈夫だぜ!楽勝楽勝!」
「もう、油断しちゃだめだよ。ヨハン君と私に教わったこと、落ち着いて思い出してね」
「分かってるって。それじゃ行ってくる」
親指を立ててにかっと笑ってみせると、十代は扉をあけて会場に入っていった。
会場といってもこじんまりとした教室で、しかも追試試験を受けるのは十代ただ一人らしいのだけど。
試験が終わるのはおよそ一時間後との事なので、私はそれまで何をして待とうかと思案しながら、校内をうろうろしていた。今日は午前授業の日ということもあり、校舎内に生徒の姿はあまりない。
「…あれ?」
階段の上の方に、見知った後ろ姿を見つけた。
コバルトブルーの髪に青い制服。ヨハン君だ。ブルー寮の女生徒と話しているようだった。聞くつもりはなかったけれど、静かな空間の中でその会話は私の耳に届いてしまう。
「…ずっとファンだったの。ヨハン君が宝玉獣のカードの持ち主として選ばれた、って世間で騒がれた時からー」
「…」
「あの…もしよかったら、一緒に外を歩かない?ゆっくり話がしたくて…」
「(これは、これはもしかしなくても、ヨハン君が女の子にデートに誘われている…?!)」
別に当事者というわけでもないというのに、私の心臓はドキドキと緊張し始めた。
偶然とはいえ、勝手にこんな会話を聞いちゃいけないなと思いその場を離れようとした時だった。
「…ああ。いいよ」
「本当に?やった!」
「(え…いま、いいよって…)」
申し出を承諾したヨハン君に、女の子はとても嬉しそうに手を合わせた。
そしてそのまま外に向かうべく階段を降りてくる姿が目に入って、私は慌てて姿を隠した。
「(…な、なんで隠れてるんだろう私…!)」
別に隠れる必要なんてないし堂々とそこにいればいいものを、私は隠れたままヨハン君と女の子が並んで歩く姿を後ろから見送ったのだった。
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