12 もやもや


ヨハン君と女の子の姿が完全に見えなくなったあとも、私はその場に立ったまま今の光景を頭に思い浮かべていた。

女の子がヨハン君のファンだと言って、よければゆっくり話がしたいと言って彼を誘った。そしてヨハン君は断ることなくそれに応じて、二人は並んで校舎を出ていった。


…そっか。ヨハン君は優しいし人当たりもいいから、きっと私が知らないだけで女の子の友達だって何人かいて、その子達にも変わらず接しているのかもしれない。


今までヨハン君が女子生徒と並んで歩いているところを見たことがなかったから、仲良くしてもらえてるのは私だけ、なんでどこかで思い上がっていた部分があったのかもー。


「…勘違いにもほどがあるよね」


ぽつりと呟いたあと私は時間を潰すべく、そのまま図書室へ向かった。





「おーい!いたいた、ユリ!」
「あ、十代!」


一時間ほど経ったであろう頃、図書室で本を読んで待っていた私の元に十代が駆け寄ってきた。

…まぁ、読んでいたと言っても、先ほどの光景が頭に浮かんできてしまってほとんど内容は入ってこなかったんだけど。


「追試試験、どうだった?」
「すっげえ簡単だった!ユリとヨハンが毎日教えてくれたおかげだな。サンキュー」
「そっか、よかったぁ…」


ひとまずは留年を免れることができそうだな、とホッと胸をなで下ろす。


「そういえばヨハンは?」
「あ、えっと…」


さっき見たことを話してもいいものか分からなくて返答に詰まる。そして同時に先ほどの光景を思い出して、気持ちがどことなく沈むのを感じた。


「…ユリ?どうした?」
「え?」
「なんか元気ないぜ」


もしかして腹減ったのか?と十代が顔を覗き込んできて、その近さにどきっとしてしまう。

十代が自分のことを心配してくれているのはとても嬉しかったけれど、今はそれよりもなんとなく一人になりたい気分だった。


「ううん大丈夫!私、ちょっと夕ご飯まで寮でのんびりしてようかな」
「そうか?何かあったら言えよ?」
「…うん!ありがと」


微笑んで見せたけれどやはり心配してくれているらしく、十代はブルー寮まで私を送ってくれた。

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