17 やきもち


「…ど、どうしたんだ?ヨハンの奴。あんなに急いでユリを連れてって」


2人が去った後。
みんな突然の出来事に驚いたため少しの間静寂が流れていたが、最初に十代が口を開いた。


「オレが触ってみた感じは熱なんかなさそうだったけど…ホントはすごく具合が悪かったのかな」
「はぁ…もう十代ったら。貴方本当に鈍いのね」
「あれだけ分かりやすいのに気づいていないのは貴様だけだぞ。全くおめでたい奴だ」


明日香はため息をつきながら、万丈目は心底呆れたように言った。レイですら少し呆れた表情を浮かべている。


「な、なんだよ。みんな分かってんなら教えてくれよ」
「…それを私たちの口から言うのは、ヨハンに悪いからやめておくわ。いずれ分かるといいわね」


明日香はそう言って、目の前のクッキーをまた一枚手に取った。





「…あの」
「…」
「…ねえ、ヨハン君…?」
「…」


さっきからこの調子。
何度か呼びかけているけれど、私の手を引いたまま前を歩く彼はなにも答えてくれない。
後ろを歩く私にはもちろんヨハン君の表情なんて見えなくて。


「…っ、ヨハン君っ!」
「!」
「あの!寮への道、こっちじゃないよ!」
「あ…いっけね」


ようやく立ち止まると、彼はしまったというように軽く頭に手をやった。

やっと動きを止めてくれたので私はヨハン君と向き合うようにして立ったけれど、彼は私から顔を逸らしている。


「ねえヨハン君…その…」
「…」
「私、熱なんてないよ…?だから大丈夫…」
「…悪い。分かってたさ」
「え?」
「…熱なんてないって分かってた。でも、十代に触られてるとこ…見たくなかったんだ」
「え?」
「あーっ…カッコ悪すぎるぜ…オレ」


そう言ってヨハン君は片手で口を覆う。
その顔は真っ赤に染まっていた。

もう片方の手は未だに私の腕を掴んでいて、ようやくそのことに今気づいて手を離してくれた。


「あっ!悪い…!」
「ううん、大丈夫…けどなんで…」
「へ?」
「なんで私が十代に触られてるとこ見たくなかったの?」
「それは…えーっと…」
「?」
「え?本当に気づいてないのか?」
「うん…?」
「…ははっ!なんだ、そっか」


さっきまで困っていたような表情を浮かべていたのに、突然ヨハン君は笑い出した。なんだか今日のヨハン君は表情が豊富だ。


「ならいいんだ、連れ出してきて悪かった。オレはもう部屋に戻るけど、ユリはどうする?」
「うーん、もう遅いし私も部屋に戻ろうかな」
「そっか。じゃ行こう」


結局その答えを聞けないまま、ヨハン君は歩き出した。なんだかうまく話を逸らされてしまった気がしなくもない。


「あっ!待ってヨハン君!」
「え?」
「道、そっちじゃないよ」
「…あ」


彼の方向音痴は筋金入りらしい。


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