19 which?
「…それでね、明日も朝から実技じゃない?また引き悪かったらどうしようって今から不安なのよ」
ドア越しに、女生徒の女の子たちの話し声が近づいてくるのがわかる。
私はヨハン君を部屋に引き入れたあと、ドアに耳を寄せて耳を澄ましてその声を聞いていた。ヨハン君もドアに背を預けるような形でその声を聞いている。
「まぁなるようにしかならないわよ、カードを信じて頑張りましょ」
「そうよねー、それしかないもんね…」
だんだんとその声は小さくなっていって、2人の生徒が遠ざかっていったのが分かった。
どうやら何事もなく通り過ぎて行ってくれたようだ。完全にその声が聞こえなくなったところで、私ははあ、と大きく息を吐いた。
「…行ったみたい。もう大丈夫だと思う」
「ふー、危ないとこだったぜ。ありがとな、ユリ。まさかこんな遅くに誰かと鉢合わせそうになるとは思ってなかった」
ヨハン君も安心したように息を吐くと、すぐに落ち着きを取り戻したようだった。
それから私に向き合うと、そのままじっと私の姿をその瞳に映す。
「…?」
「…ああ、制服以外を着ているところ、初めて見たからさ」
「うん、流石にこんな時間だとね」
「まあな。…似合ってるな、部屋着」
「えっ?!あ、ありがとう…」
そしてすぐに視線を私に戻すと、なんと彼は緩慢な動作で片手を伸ばして私の頬に指先で触れたのだ。
その感覚だけで私の身体中に緊張が走ったのを感じる。
「っ…」
「顔、まだ赤いな。風呂上がったばっかりか?」
「えっと…う、うん、そうだけどどうして…?」
「…いや」
じっと見つめられる。その視線には熱情がうっすらと浮かんでいる気がして、私はどうすればいいのかわからずに立ちすくむしかできなかった。
なんだか今のヨハン君はいつも話しているヨハン君と雰囲気が違う。
「なあ、ユリ」
「…?」
「十代に触られてた時と今、どっちの方が緊張してる?」
「え?!えーっと…?」
「真剣に答えてくれよ」
緊張のあまり息苦しくて、もう、何変な言ってるのヨハン君、と言って茶化してしまおうかと思ったけれど、彼の真っ直ぐな視線がそれを許してくれないとすぐに分かった。
そもそもどうしてそんなことを聞くんだろう。どっちの方がより緊張していたからと言って、何か優劣でも生じるのだろうか。
質問の意図も分からないし、ただ戸惑って答えに詰まったままでいると、ヨハン君はふっと笑って指先を私の頬から話した。
「…なーんてな」
「え?」
「今のナシ。気にしないでくれよ」
そしてドアに手をかけて扉を軽く開けたところで、私の方を振り返りながら「おやすみ」と静かに言い放ってヨハン君は部屋を出て行った。
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