20 かすかな変化


朝だ。
カーテンの隙間から差し込む朝日で私は自然に目を覚ました。

結局昨日は、ヨハン君とのやり取りを思い返してしまって遅くまで眠れなかった。

頭の中には疑問符が浮かんだままだったけれど、いくら考えても答えは浮かんでこないままだったのでそのまま諦めて寝た始末だった。

ベッドから身体を起こすと、昨日ヨハン君が私の頬に触れたことを思い出した。その部分に自身の手を置くと、胸がじわりと熱くなる。

昨日向けられた真剣な眼差しは、一体私に何を伝えたかったのだろう。



お陰で朝一の実技テストは散々で、同じブルー寮の男子生徒にものの見事に惨敗してしまった。

その事に落ち込んで、次の授業が始まる前に机で突っ伏していると、誰かが不意に隣に腰かけた音がした。


「よっユリ、なーに落ち込んでんだよ」
「十代…!」
「なんだ?もしかしてさっきの実技テスト、負けちまったとか?」
「うっ…」


図星も図星。
先ほどのデュエルの内容を思い出して再び暗い気分が蘇り、私はまた机の上に伸びた。十代はそんな私を見てからからと笑っている。


「そんなに暗くなんなよ。次勝ちゃいいだろ」
「…ひどい負け方だったんだもん…」


寝不足のせいか自分の伏せたカードが何のカードだったのかど忘れしてしまった上に、ダイレクトアタックを食らって大敗した。先生には体調不良かと心配される有様だ。


「ふーん。ま、元気出せよ。お前笑ってた方が可愛いんだからさ」
「…っ」


くしゃ、と頭を何度か撫でられる。
そして最後にぽんぽん、と頭に優しく手を乗せてくれた。その太陽のような微笑みに私は何度も救われてきたんだ。


「…ありがとう、十代」
「おう」


にこっと笑った十代に、なぜかヨハン君の姿がだぶって見えた。
そういえば十代とヨハン君は似ている、と明日香や翔くんが時々零していたのを耳にしたことがあったっけ。

…なんだか、ヨハン君に会いたくなってきた、な。


「…あれ?」
「ん?どした?」


違和感を感じた。今まで私は十代を前にすると彼のことで胸がいっばいになってしまって、それ以外の事はとてもじゃないけど考えられなくなることがいつもだった。そんな余裕はなかった。

けど今私はたしかに、十代を前にしてヨハン君に会いたい、と思ったのだ。


「…なんでもない」
「そうか?しかしハラ減ったなー、もう弁当食っていいかな」
「ええ?まだ一限目終わったばっかりなのに」
「育ち盛りなんだよ」


今日の弁当のおかず何かなー、とうきうきした表情でつぶやく十代に、私は思わずくすりと笑みをこぼした。

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