21 浮き立つ
「…あ、ヨハン君!」
お昼休みが終わりかけた頃、校長室の近くで探していた人物の後ろ姿を見つけた。
「ここにいたんだ」
「ああ、鮫島校長と少し話をしてたんだ。どうしたんだ?」
「え?用は特にないけど…」
先ほどヨハン君に会いたい、と漠然とそう思ったから彼の姿を探していただけのことであって、特に用があるわけでもなんでもなかった。
ーそっか、理由がないと探すのは変だったのかな。
どう言葉を続けようか迷っている私を少しの間見ていたかと思うと、ヨハン君はふっと表情を崩して言った。
「なんだよ。もしかしてオレに会いたくなったとか?」
「っ?!そ、その…ええと…」
「…あれ、まさか当たりだった?」
「……」
まさかの当たりです、とも言えるはずがなく、返す言葉が見当たらなくなってしまう。
するとヨハン君がいたずらっぽく浮かべていた笑みが次第に消えていってしまったので、不安になっておずおずと尋ねた。
その表情には、信じられない、といった心情を浮かべている。
「…あの、迷惑だった?」
「そんな訳ないだろ。すっげー嬉しい」
「よかった…」
ほっと胸をなでおろす。
さすがにここで、用もないのに来るなとか言われるだなんて思ってはいなかったけれど、むしろその逆で喜んでもらえているとは考えてもみなかった事だった。
「ユリが会いたいって思ってくれたなんて、なんか嘘みたいだな」
「え?嘘じゃないよ?」
「わかってるって」
ヨハン君はからかうように笑うと、小さく呟いた。
「ようやくオレのこと、意識してくれたって事かな」
「え?何か言った?」
「ん、まあいいや。とにかく一歩前進だ」
満足したようにひとり頷くと、「天気もいいし中庭でも行こう」と言って私を校舎から連れ出してくれた。
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