23 新パック
「なぁなぁ!今日発売の新パック、さっそく購買で買ってきたんだ。オレの部屋で開けてみようぜ!」
終業のチャイムが教室に響き渡ったとき、十代のうきうきとした声が右隣から聞こえてきた。
いつものことだけど、ついさっきまで居眠りをしていたくせに、授業が終わった途端に元気になっている。
十代の隣に座っているヨハン君は楽しそうにそれに応じた。
「へぇ、いいじゃないか。それは是非見たいな」
「だろ?あ、ユリも来るか?」
「え?いいの?」
十代の部屋に行くのは、追試試験の勉強を教えるために行った時以来だ。
パックを開封している楽しそうな十代が見れるなら、断る理由なんてなかった。
「おう!じゃ行こうぜ!」
3人で校舎を出てレッド寮へと向かう。その間も十代は、あのカードが当たって欲しいだの、もし手に入ったらこんなコンボをやってみたいだのとにかくデュエルの話をしている。
「それは面白そうだな!オレもあのカードは気になってるんだ」
けれどヨハン君も負けていない。
当たり前だけれどやっばり2人ともデュエリストで、デュエルが大好きなんだな、と思う。
十代と同じぐらい楽しそうな顔をしているヨハン君の横顔を見て、私はほんのり幸せな気持ちになれた。
「あっ!アニキ!見つけたドン!」
「なんだよ剣山。なんか用か?」
レッド寮がすぐそこに見えてきた頃、剣山君が走りながらこちらへ向かってきた。
「イエロー寮の一年生がアニキとデュエルしたがってるザウルス」
「えー?オレ今から新パック開封すんだよ。また今度にしてくんねぇ?」
「でもアニキとデュエルできるのを心待ちにしてるドン。アニキの大ファンって言ってるザウルス」
「え?大ファン?参ったなー。そう言われると断りきれないぜ」
本当に単純な性格だ。
隣にいるヨハン君もやれやれ、という表情を浮かべていた。
「しょうがないから相手してやるよ。ユリ、ヨハン、悪いけどコレ持って先行っててくれ」
「ちょっと十代…!」
「すぐ戻るからさー!」
パックを私に手渡すと、十代は剣山君とともに走り去ってしまった。残された私とヨハン君は顔を見合わせて苦笑する。
「まったく十代は単純だな」
「ほんと。分かりやすいよね」
「すぐ戻るって言ってたし、先に行ってるか」
「そうだね…あ、でも部屋の鍵は?」
「どうせいつも閉め忘れてるし、今日もなんじゃないかな」
「そう…」
相変わらず不用心なんだな、と思いつつ、渡された新パックを片手に、私とヨハン君は十代の部屋に向かうために二階へ向かう階段を登った。
1/37
prev next△