27 暗雲

十代の話によると、今日の朝、いつものようにトメさんがファラオの朝ごはんを用意しておいたが一向に来る気配がなかったらしい。

放っておけばそのうち来るだろうと思って放置していたけれど、午後を回ったこの時間になっても姿を見せない。

心配になってファラオを探して回ったけど、どこにもいないということだった。


「今、万丈目や明日香や翔も手分けして探してくれてる。ヨハンとユリにも手伝って欲しいんだ」
「当たり前だろ、すぐに探そう。ファラオが行きそうな場所に心当たりはないのか?」
「いつもならレッド寮付近にいるんだけどな…」


大変だ、と十代の話を聞きながら思った。
少し前のことだけど、ファラオがじっと私を見上げて話を聞いてくれたことを思い出した。

ファラオは猫だけど、もしかしたら話が通じているんじゃないかと思わせてくれる、どこか不思議な子だ。

同時にレッド寮の象徴的な存在でもある。絶対に見付け出さなきゃいけない、と強く思った。



話し合った結果、私は森の方、十代は校舎の方、ヨハン君は海辺の方を探すことになった。夕方をめどに探して、そのあとレッド寮の前に集合だ。


「ユリ」
「なに?ヨハン君」
「森の方は迷いやすいかもしれない。あまり奥の方まで行きすぎるなよ」
「うん、ありがとう」
「早く終わったらオレもそっちに合流する。じゃあまた後で!」


その言葉を後に、ヨハン君は背を向けて走り去っていった。





「…ファラオー!ファラオ、どこにいるの?」


静かな森の中に私の声が響く。それに重なるようにして、鳥たちのさえずりが聞こえてきた。

さっきまでいた場所からどのくらい離れたのかは分からないけど、かなり奥の方まで来ていると思う。


後ろを振り返ってみても、もうそこには木々が生い茂るばかりで、道という道はもうない。

少し日も陰ってきていたのでそろそろ引き返そうかと思ったけど、ファラオの愛らしい姿が頭に浮かんで、思いとどまった。


「もうすこしだけ…」


もしかしたらこの先にいるかもしれない、と気を持ち直して、私はさらに森の奥へと進んだ。





「ファラオー!どこにいるのー!」


気がつけば空はオレンジ色に染まっていて、木漏れ日はすっかりなくなった代わりに、辺りは薄暗くなってきていた。


ーそろそろ戻ろう。
そう思って振り返ってみたけど、そこにあったのは昼間とは違う光景だった。

夢中で探していたから気づかなかったけど、森の中は、木々のせいで空の明るさよりもずっと暗くなる。

まだ大丈夫だ、まだ大丈夫だと思いながら進むうちに、私は知らないところまで来てしまったのだ。


「うそ…私…どっちから来たっけ…?」


ぐるりと周りを見回しても、どの方向から進んできたのか見当もつかなくなってしまった。

その場に立ち尽くしているよりも、とにかく歩けばどこかに出ることができるかもしれないと思った私は、足早にその場から去った。

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