28 光芒


「おーい、ヨハン!ファラオが見つかったって!」
「えっ?本当か?!」


オレは海辺でファラオを探していた。
もうすっかり日が暮れて、そろそろ集合場所であるレッド寮の前に向かおうと思っていた時、十代の声が聞こえてきてそちらを振り返った。


「ああ。体育館裏にいたって。明日香が見つけてくれたんだ」
「そうか。良かったよ、無事見つかって」
「ちょっと足に怪我してたみたいだけど、特に問題はないみたいだ。さ、もう戻ろうぜ」


十代の言葉に頷いて、オレは海辺をあとにした。




レッド寮の前に向かうと、翔君や剣山君、明日香、万丈目君といったメンバーがすでに集まっていた。

明日香の腕にはファラオが抱かれていて、その右足には小さく包帯が巻かれているのが見える。


「ありがとうな、みんな。ファラオを探してくれて」


十代が礼を言った。


「当然よ。とにかく無事見つかってよかったわ」
「しかしファラオ貴様、羨ましいぞ。天上院君の腕に抱かれるなど…っ」


万丈目が拳を震わせて悔しがっている。
オレはそこに集まったメンバーを見渡して、ふと気がついた。


「ユリは?まだ戻ってないのか?」
「…そういえばまだね。夕方をめどにって話だったけど…」
「…!」


ユリがまだ戻ってきていない。
オレは日が暮れて暗くなった空を見上げて、もしかしたら、と心がざわついたのを感じた。


「あっ!ヨハン!」


ーユリ。何事もなければいいが。
そう願いながら、オレはすぐにその場を駆け出した。後ろからみんなの声が聞こえてきたけど、立ち止まるつもりはなかった。



森の方へ向かうと、風で木々がこすれあって不気味な音を立てた。

昼間はあんなにのどかな雰囲気だけど、夜の森というのはこんなにも姿を変える。


「ルビー!頼むぜ!」


オレの呼びかけに応じて姿を現してくれたルビーを肩に乗せ、暗い森の中へ飛び込んでいった。


ー今行くから。待っててくれよ、ユリ。






「…」


今、一体何時なんだろう。
普段から時計を持ち歩くことがないため、正確な時間さえ知ることができずにいる。

けど辺りはすっかり暗くなっていて、もう夜と呼ぶような時間になってしまっていることだけは分かった。


あれからまた歩いてみたけど森の終わりが見えることはなく、偶然見つけた小さな洞穴で一休みすることにした。

聞こえてくるのは風の音と、木の葉がこすれあう音、あとは虫の声くらいなものだった。


「…寒い…」


もともと暖かい気候に位置するデュエルアカデミアだけど、夜になると当然気温は下がる。

加えて女子の制服はなかなかに露出が高いため、自分で自分の身体を抱きしめるような体勢で少しでも寒さをしのごうとした。


「今夜はここで過ごすしかないかなぁ…」


この暗さで森の中を動き回るなんて、とてもじゃないけど怖くて無理だった。

となれば朝になるのをここで待つしかないけど、野宿ーそれもたった一人で、なんて経験はもちろんない。

どんな動物がいるのかも分からないし、安全が保障されていないこんな状況の中で過ごすのは耐えがたかった。


心細くて自然に涙が溢れてくる。昼間に別れたヨハン君の顔が心の中に浮かんで、心細さは更に加速していった。


「…会いたいな」


今すぐにでも、あの優しげな目に自分を映してほしい。いつもみたいな温かい笑顔を私に向けて欲しい。

きっと、避けてるって思われたままだ。そんな事ないのに。ただ私に、勇気が足りなかっただけなのにー…


「…っ」
「…ユリー!」


涙が一筋、頬を伝って流れたとき、誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。

はっと顔を上げてそちらを見ると、暗闇の中から、いま会いたくて仕方がなかったその人が現れた。

その人は、息を切らせながらー、でも優しく微笑みながら、私をその綺麗な瞳に映していた。


「…見つけた」
「ヨハン…君…」


嘘みたいだ、これはきっと夢だ、なんてことを考えていたら、私はヨハン君に強く抱きしめられた。

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