31 伝えたかったこと


しばらくレッド寮の前で立ったまま待っていると、遠くの方から足音が聞こえてきた。そちらを見るとやっぱり十代の姿があって。


「ユリ!良かったな、心配したんだぜ」
「ごめんね心配かけて…。私を探してくれてたんだね、ありがとう」
「あったり前だろ、とにかく見つかって良かったぜ。…あれ、みんなは?」


私の姿を見てホッとしたように笑ってから、十代は辺りを見回した。


「もう遅いからって先に寮に戻ったの」
「あーそっか。って、お前は?戻らなくていいのか?」
「うん。…十代にね、話したいことがあったから」
「話したいこと?なんだよ、改まって」


私は一度息を吸って吐いて、気持ちを落ち着けた。

私の中にあるこの大きな想いを、十代に届けたかった。聞いて欲しかった。



「あのね、覚えてる?初めて十代が私に話しかけてくれた時のこと」
「ああ、覚えてるぜ。確か実技の授業の後だったよな」


そう。あれは入学してから間もない時に行われた実技テスト後のことだった。

ちゃんと実力を見せなければならなかったのに、初めてのテストということで極度に緊張していた私は凡ミスを連発し、デュエルの内容はひどいものになったのだ。

そして落ち込んでいた時、声をかけてくれたのが十代だった。


『なあ!お前のデュエル、すっげー面白いな!』
『(この人は確か遊城十代君…だっけ…)あ、ありがとう。でも見てたでしょ?ボロ負けしちゃったの』
『負けたのなんか気にすんなよ。楽しければそれでいいと思うぜ、オレは』
『え…』
『それにお前、緊張してて力を出しきれてなかっただろ。なあなあ、この後オレとデュエルしてくれよ!』


そしてその後十代と戦った。
結果は負けてしまったけど、デュエルをしている時の十代を見ていたら、ああ、わたしもこんな風に楽しんでデュエルがしたい、という気持ちにさせられた。


『お前、名前なんていうんだ?』
『…ユリ、です』
『そっか、ユリって言うのか』


そして向けられた太陽みたいな笑顔。
私はあの日からずっと、十代に魅入られてきたんだ。


「私ね、初めて十代に話しかけてもらった日からずっと…ずっと、十代が眩しかった。キラキラしてて、いつも全力でデュエルを楽しんで」



『君は遊城…十代君だよね?遊城君って呼べばいい?』
『そんな呼び方、堅っ苦しくねぇ?十代でいいぜ!』
『…!えっと…じゅ、十代…?』
『おう!これからよろしくな、ユリ』



「…十代は、私にとって…とっても大きな存在でね」
「…」
「私にとって…誰よりも、何よりも、憧れなんだ」



そう…きっと、あの日からずっと私は十代という存在に憧れてきた。

いつも自分の気が弱いせいでその気持ちを伝えられずにきたけど、十代という存在に救われ続け、照らされてきたんだ。

十代は口を挟まずに黙ったまま私の話を聞いてくれていたけど、やがてゆっくりと微笑んだ。


「そっか。ありがとな、ユリ」
「…うん、私こそありがとう、十代」


自分の気持ちに気づくことができたからこそ、感謝の言葉にして伝えたかった。そして十代はそれを温かく受け入れてくれた。それがとても嬉しかった。



「じゃあ、もう寮に戻るね」
「そうか?遅いし送ってくぞ?」
「ううん、大丈夫だよ。おやすみ十代!」


ずっと伝えたかったことをようやく十代に伝えることができた。
これで私は一歩前に踏み出せるような気がする。

晴れやかな気持ちに包まれながら、私は十代に手を振って歩き出した。
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