4 お昼ご飯


「はー…恥ずかしい…」


思わず私は両手で顔を覆った。何が恥ずかしいのかというと、錬金術の授業中に居眠りをしてしまい、その様子を隣に座っていたヨハン君に見られてしまったことだ。


「気にすんなって。そんなに恥ずかしがる必要はないさ」
「あ、ありがとう…」


そう優しく微笑んでくれる彼に救われつつ、私達は教室を後にして購買に向かった。



「あ、十代!」


お昼ご飯を買おうと、購買部に列をなす生徒たちの中に彼の後ろ姿を見つけて思わず私は声をあげた。その声に気づいた十代はこちらに向かって手を上げて応えてくれた。


「おっ、ヨハン!ユリ!…あれ、なんで2人が一緒にいるんだ?」
「ああ、ついさっき友達になったんだ。な、ユリ」
「うん!」


友達と言ってくれたことが嬉しくて、なんだかくすぐったいような気持ちになった。


「なあ十代、オレの分もドローパン買っといてくれよ。一緒に食おうぜ」
「ああ、いいぜ!ユリもいるか?」
「あっ、ううん。今日はお弁当を作ったから…教科書置いてくるついでに持ってくるから、一緒にお昼、食べてもいい?」
「もちろん!じゃあ中庭に集合な!」
「うん!じゃ、あとで!」


思わぬ収穫で、十代とお昼ご飯を食べる約束を取り付けることができた。
私は飛び上がって喜びたい気持ちを抑えながら、お弁当を取りに行くべくブルー寮へと向かった。




「おっ、来た来た」


遠目から私を見つけてくれた十代。その手にはドローパンが握られていて、今まさに食べようとしているところだったらしい。

十代の前にはヨハン君が胡座をかいて座っていて、私はその隣に腰かけた。


「お待たせ、2人とも」
「おう。んじゃ、いただきまーす!」


手にしていたドローパンに大きな口を開けてかぶりつく十代。そのパンの中身は、やはりというべきか、黄金の卵が詰まっていた。私もヨハン君もそれを見て、同時に感嘆の声を上げる。


「さすがだぜ、十代!ホントに引きがいいな」
「へへ、まーな。ヨハンの方はなんのパンだったんだ?」
「オレ?んーと…」


手にしていたパンの袋をペリっと開けて、ヨハン君はパンに噛り付いた。


「ん!ナポリタンだ。うまいな」
「へー、ナポリタンのパンもあったんだ」


2人のやりとりを横目で見ながら、私はお弁当の包みをほどいた。
ちなみに私はとてもドローセンスが低いため、いいパンに当たったことは今までにたったの一度しかない。
まして黄金の卵パンなんて、夢のまた夢だ。

ブルー寮で毎日食べることができるご飯も、いまいち私の口には豪華過ぎたらしく、こうしてたまに自分でお弁当を作ることにしている。

お弁当の蓋を開けて、お箸を取り出して「いただきます」と呟くと、2人の視線がこちらに向いていることに気がついた。十代がお弁当を指差して言う。


「すっげーな、それ自分で作ったのか?」
「うん。でも…そんなにたいしたものは作ってないよ」


今日のおかずは特製卵焼き、ほうれん草のおひたし、それに豚の生姜焼きだ。たまにこういった、ザ・日本食みたいなものが無性に食べたくなる。


「ふーん。うまそーだな!一口くれよ」
「へ?」


十代の突然の申し出に私は動揺した。どうしよう、せっかく食べてもらえるチャンスなのだから、どうせなら一番うまく作れたものを食べて欲しい。それなら…


「じゃ、じゃあ卵焼きでいい?」
「おう!いっただっきます!」


お弁当箱を差し出すと、十代は卵焼きを摘んで口に放り込んだ。
ドキドキしながらその様子を見守っていると、もぐもぐと咀嚼したあと、「うっめー!ユリ、すげーよ!」と太陽のような笑顔を私に向けてくれた。


「ほ、ほんと?よかった」


ほっと胸をなでおろす。
こんな笑顔になってもらえるなら、いくらでも作ってあげられる、とさえ思えた。

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