8 secret
「(はぁ…十代に頭撫でてもらえる日が来るなんて夢にも思わなかった…幸せ…)」
レッド寮からの帰り道、ブルー寮へ向かいながら、私はついさっきの出来事を思い出していた。
初めて頭を撫でてもらえた。初めて触れてもらえた。ほんの一瞬のことだったけれど、それでも天にも昇る心地だった。
「なあ。また顔が赤くなってるぜ」
「えっ?!あ…」
「ほんとに分かりやすいな、ユリは」
そう言ってヨハン君はくすっと笑った。 もう夜であたりも暗いから、顔が赤いことなんて気付かれないと思っていたのに。
「…ばれてたかぁ…」
「うん。ほんとに十代のことが好きなんだな」
「(…好き?)」
またあの疑問が頭をもたげる。
この前もヨハン君に聞かれたけれど、私は十代のことが好きなのだろうか。
「オレはさ、ユリのこと可愛いと思うよ」
「えっ?」
「一緒にいて楽しいし、いい子だと思う」
「…ヨハン君?」
「だから、オレに何かできることがあったら言ってくれよ。できるだけ応援するからさ」
そう言って笑う。
けれどその表情はどことなくぎこちなくて、わずかに眉根が下がっている様子が見て取れた。
その理由を聞こうとしたけれど、目の前にはブルー寮が近づいてきていた。
「着いた。じゃまた明日な、ユリ」
「あっ…うん。おやすみなさい」
引き止める前に、彼は片手を軽くあげて寮の中へ入っていった。今感じている疑問はなんなのか、そのうちわかるのだろうか。
「ちょっとヨハン、どうしてユリにあんなこと言ったの?」
部屋に入ってソファーに崩れるように座ると、アメジストキャットが現れてそう言った。
「どうしてって。ユリは十代のことが好きなんだから、応援するのは当然だろ」
「もう。私たちがヨハンの気持ちに気付いていないとでも思ってるの?」
「…気持ち、かぁ」
出会った最初の日。
隣の席に座って一緒に授業を受けていたら、ユリは居眠りをしていて、その横顔が可愛らしくて思わず笑ってしまった。
居眠りしていたことを指摘したら真っ赤になって、それがまた可愛いな、なんて思った。
けどすぐに気づいたこと。
それは彼女が、十代の事が好きなのだという事だ。目線の先には十代がいて、十代の言葉や態度に一喜一憂しているのは明らかだった。
そのことに落胆を覚えなかったというと嘘になる。でもまだ出会ってたった数日で、自分の気持ちに自信が持てないという思いもあった。
「心配してくれてありがとな、アメジストキャット。でもオレは大丈夫だ」
「ヨハン…」
「もう寝よう。明日も朝から授業なんだし」
そう言って、話を無理矢理終わらせることにした。今は考えても仕方ない。…それにしても、まさか宝玉獣たちに自分の気持ちが気づかれていたなんて。
「…分かりやすいのはオレもだったか」
苦笑して、オレはシャワーを浴びるために浴室へ向かった。
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