貴方に焦がれて
優しげな瞳。
私よりもずっと高い背。
がっちりとした身体つき。

「ユリ?」

そしてその声の一つ一つにまで魅了されてしまったのは、いつからだろう。

「…ユリ?どうしたの?」
「はっ…!う、ううん、なんでもないよ!」

ついぼうっとしてしまっていたらしい。
ブルーノの声に、はっと我に帰り、私は慌ててコーヒーを机の上に置いた。

「ありがとう」

マグカップを手に取って、私ににこりと微笑んでくれる。私は平静を装って「うん」とだけ軽く返すと、その場を離れた。



「…はぁ」

二階の居間へ向かい、ソファに崩れ落ちるようにして座った。
ただコーヒーを置いて、「ありがとう」と微笑まれただけ。たったそれだけなのに、こんなにも胸が苦しくなるなんて。

「変なの、私…」

恋なんて久しくしていないから、こんな感覚は忘れていた。だから相手の一挙一動に全神経を奪われてしまうような感覚に陥るのも久しぶりだった。


「…ブルーノ」

ぽつり、と彼の名前を呟いてみる。途端に心がじわりと温かくなって、そしてすぐに切なさが襲ってくるのを感じた。

「なに?ユリ」
「…えっ?!」

入口の方から声がして、ばっとそちらを見る。
今しがた名前を呟いた人物がそこに立っていた。

「ど、どうしたの?」
「なんか様子が変だったからさ。心配で」

ブルーノはソファに歩み寄ると、そのまま私の隣にそっと腰を下ろした。グレーの双眸がこちらに向けられている。

「…大丈夫、だよ。なんでもないから」
「本当に?」

これ以上隣にいられると心臓がもたないと思った私は、こくこくと頷いて見せた。ブルーノは「そう?」と小首を傾げている。

目を合わせていることすら、今の私には緊張でおかしくなってしまいそうで。もう逸らしてしまおうかと思った次の瞬間、ブルーノの大きい手が私の方頬に添えられた。

「ならよかった。ユリに何かあったら、Dホイールの調整どころじゃなくなっちゃうからね」
「え?」
「じゃ、オレは戻って作業を続けるよ」

最後にまた、にこりと微笑んでブルーノは階下へ降りて行った。
優しい眼差しと、彼の体温が私の胸を焦がし続けていた。


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