感覚強盗ちゃん。




 この見た目、この能力。なるほど今生の僕はシャックス・リード!…………うん、違うね?ほうほう、あー、あぁ……なるほど?
 つまりボクはリンディちゃん!!

__☆
 驚異の順応性を発揮し、魔界ではなく人間界で面白おかしく過ごすこと産まれてから15年目。

 一個下の後輩から、優等生の面を被ったヤンキーがいてムカツクんですよーと愚痴をこぼされた。そんなんいたかなと考えていたら、別中の奴らしい。
 え〜、何それ面白ぉ。と好奇心に背中を押されて学校サボって見物しに行けば、めっちゃタッパのでかい奴だった。しかも顔もいい。案内の為に連れて来た後輩曰く、頭もいいし運動神経もいいし、勿論喧嘩も強いらしい。はぁ?完璧超人か?もう存在が嫌味じゃん?ボクとは全くもって相容れない存在ですサヨナラ。
 あっちの視界の外なのを良いことに、両手で中指立ててオサラバした。

 そもそもボクはヤンキーじゃないし、真面目真面な一般女子高生なので、わざわざ関わろうと思わなきゃヤンキーとは袖すら振れ合うこともない。勉強の合間の無駄話で、どこ校とどこ校がやり合ってしょっ引かれたとか、どこ校はカンパがツライとか、どこ校の頭が変わったとか。まぁその程度は話題に上がるけど。

 特に新しいネタも無いもんだから世間話にも上がらず、一年が経ち二年が経ち。そこそこいい中学からエスカレーター式でそこそこいい高校に上がり、すっかりボクの頭から優等生ヤンキーの件が抜けかけた頃だった。
 ボンタン穿いた顔のいいノッポの後ろ姿を、帰り道の住宅地で見付けてしまったのは。

「(はぁ〜?なんでいんの〜??こっちの地区不良少なくて平和なのにさぁ)」

 え、なに、シマでも広げに来た?あの制服見たことないしどこ校行ったか知らないけど、あの格好完全にヤンじゃん。うちの高校と母校には集金とか来ないでほしいなぁ〜。

 思わず道角の塀の陰に隠れて、こっそりと様子を見る。
 何が目的か知らないが、特に迷いもなく進む後ろ姿は堂々としていて、特に疚しいことをしそうな雰囲気はない。でもたまに、何もないはずの所を一瞬見ては目を逸らす動作を繰り返すもんだから、ちょっと挙動不審。尾行しているボクも十分不審者だけど。

 日も沈み始めたのでそろそろ家に帰りたいが、目の前の優等生ヤンキーの行動も気になって帰るに帰れない。今日の夕飯は姉ちゃんのリクエストと言う名のワガママでとても豪勢らしいから、早く帰りたかったのに。
 メールでぽちぽち帰宅が遅れる旨を母親に送ったが、返してきたのは姉だった。「美味しくいただきまーす」と画像付きで。そういう奴だって知ってたよボクは。

 住宅地を通り過ぎ、なんならボクの家もとっくの疾うに通り過ぎ、到着地点は町の外れにある廃工場だった。
 なんか事故起こして人が死んだとかなんとか。それからは化けて出るだか何だかで事故が続出して、終いには倒産してしまったらしい。今では肝試しによく使われている。以上後輩情報。

 今からここで集会でもすんの?ここを拠点にして周りの奴らシメ始めんの?やめてよ、折角のボクの平和な人生終わらせるつもりか。
 鍵は閉まっていなかったようで、錆びた扉をギシギシ言わせながら開き躊躇なく中へ入っていく。不法侵入〜、と心の中で突っ込みつつ自分も後に続いて中に入った。

「   」

 なんか言ったなと思ったら、バッコンバッコン周りの機械やら天井やら壁やらが何かにぶつかられてぶっ壊れていく。やべぇポルターガイスト現象を目の当たりにした気分。
 工場が倒壊しないかハラハラしつつ機械の陰から眺めていれば、崩れかけていた天井の一部がヤンキーの頭上に落ちてきた。無い玉がヒュンと縮こまる。駆け出そうと慌てて一歩踏み出して、とほぼ同時に、落ちてきたはずの天井の一部はデカい音を立てて粉々になった。一瞥もせずに佇むだけのヤンキーに、出した足を戻してスンッと真顔で元の位置に隠れ直す。どうやらボクの出る幕は無さそうだ。

 たまに飛んでくる瓦礫を避けつつしばらく観賞を続けていると、あれだけガンガン言っていた騒音が止んだ。
 更に廃屋らしくなった工場に何とも言えない感想を抱きながらヤンキーの今後の行動を見守っていれば、何やら手を動かして何かしている。よく見ようと目の上に手をかざすが、位置が悪く何をしているかまでは分からなかった。
 辛うじて見えたのは、いつの間に持っていたのかピンポン玉より大きいくらいの黒い塊。

「(うわー。なんかヤバイ感じするけど、どうするつもりで……、おゎ)」

 あろうことか口に含んだ。しまいに飲み込んだ。
 どう見ても食べていい物でない何かを。
 ボクの目が悪いだけで、実は大き目の黒飴だったりするんだろうか。だったらいいな。この角度だと表情が見えないから、どんな顔して食べてるのか知らないけど。

 ここで、止せば良かったのにと後々悔やむことになるが、抑えきれない好奇心がぽこぽこと湧いてきた。一体彼は何を食べたのか。実物を遠目に見てもいまいち分からなかったが、味が分かれば見当がつくのでは?だからちょっとだけ、ほんの一瞬だけだから。
 ――ちょっと“味覚”を奪うだけだから。

「お゛ッッッヴエ」

 瞬間、すげぇ汚い声が出た。
 声じゃないな、もう音でしかない。声と認識しちゃいけない汚い音が喉の奥から這い上がってきた感じ。
 いやもうそれくらい酷かった。なに?何て言えばいいの??めっちゃ年季の入った腐敗物食わされた感じ?そんな物食べたことないけど。ぅぇぅぇゲロ不味い。いやゲロ以下だわこんなもん。吐瀉物すら可愛く思える。嘘、そんなことはない。そんな感性ボクにはない。でもそれくらい最悪な味。大丈夫?ボクの体、内側から腐り始めるとかない?大丈夫??いやまぁ実際に食べて取り込んでるのは向こうのヤンキーだけど。

 ……ヤンキー、向こうに居たね?
 止まらねぇ嘔吐きを続けながら、脳みその一部がそんなことを冷静に思い出した。
 そしてボクはこそこそと尾行して、隠れていた立場だ。今じゃあもう、尻尾を出すどころか体全体出して存在を主張しているわけだけど。

「何をしているのかな?」
「ひょッ、ぶぇっごほっぉぇっ!」

 思い出した途端に降ってきた地を這うような声に驚き、息を飲もうとして変なとこに入って咽る。ちょっと待って空気が足りない!!
 咽続けるボクを見かねてか、ちょっと迷った後に隣にしゃがんで背中を擦ってくれた。テメェは誰で何の用だと問い質したくても、相手がこんな状態じゃあ何ともしかねたんだと思う。
 え、ヤバ、キュンじゃん?ヤンキーが優しいとかギャップで女が惚れるやつ!後輩がよく言ってるやつ!!
 まぁ?ボクは?間違っても惚れないけども!???



□□□
 とくによく考えずここまで思い付いたんですけど、これ以上はちょっとじゅじゅつが難しくて頭回んないので文章になりませんでした。そもそも深く考え理解しながら漫画読むの最近無理です。
 何がしたかったかって言ったら、リンディちゃん可愛いよねっていうことと、猿だけど猿じゃないカワイ子ちゃんが夏油君の人生の苦みをまあまあ理解してよしよししてくれたらなっていう。あとは夏油君の隣にリンディちゃん置いたら可愛いなって思いました。かわいい。
 後はもうボンヤリと脳内補完するしかない。


***
■鵠之 リンディ(こうの りんでぃ)
さしす組の一個上。
金髪は地毛です。
じゅじゅつのお話を知らない、まいるまは知ってるガワだけリンディちゃん転生主。ガワだけなので悪魔ではなく人間。残念。でも家系能力は使えるからよし。
順応性が高いので、生まれ変わったことだとか、もしや成り代わり?いやでも性別違うし魔界じゃないしなぁをなあなあで受け入れて過ごしている。リード君ではなくリンディちゃんなので成り切るつもりは更々無い。そもそも成り切れるほど理解も深くないので無理だなと最初の頃に諦めた。推しは入魔君とイルミ様。入間君に成り代わってたら多分頑張ってた。
好奇心とか賭けに対する意欲とかはちょっと引っ張られてる。(王の教室の使用許可を賭けた先生との一戦、勝った時の表情がやべぇ好きです)(好きです)(とても好きです)
人生周回しているのでまぁおつむは良い。そこそこいい中学はそこそこどころでなく偏差値が高い。
不思議能力はあるが呪力は無いのでじゅじゅつしにはなれない。呪霊は見えないけど、ゲトーさんの術式で丸められた呪霊の玉は見える。呪霊見える眼鏡あれば呪霊からも感覚が奪える。

 女としてどうよ?な嘔吐き場面を見られたので出来れば今後は関わり合いたくない。
 でも何でこんなクソ不味な物を摂取しているのかは気になるので教えてほしい。逸る好奇心。もしや美味しいと思いながら食べてる?あ、そんなことない?そう。
 そもそも奪った味覚で感じたゲロ不味さなのだから、そりゃあ元の人も不味いと感じているでしょう。慣れと忍耐力と理性の強さの違い。
 じゃあなんでそんなの食べてるの?とグイグイ聞かれてポツポツと始まるぼやかしながらの身の上話や愚痴やその他いろいろ。長くなりそうなので、口直しも兼ねて鞄に入れていたパックジュースや菓子や駄菓子やつまみを広げる。女子の鞄って色々入ってるよね。ホラホラ食いねえ食いねえ。
 呪霊とか呪術とかよく分からないけど、何かいるのはなんとなく分かるし世の為人の為に頑張ってくれているのも分かる。ただでさえ危険そうなのに、こんなクソ不味い物を食べてまでとか本当にスゴイ。ちょっとお高いお菓子もあげよう。
 この廃工場も仕事で?え、違うの?久し振りに地元に帰ってきたらきな臭い話を聞いたから様子見で?真面目か。いい子か。偉い、偉いな。ヨシヨシしてやろう……、頭の位置が高いっ!(届かない)オイコラ笑うな。

 もう暗いのでと家まで送られ、出迎えた姉が高スペックを嗅ぎ付けて夏油君に言い寄るのお約束では。

 地元でたまぁに会うのに加え、東京に遊びに行った時にもバッタリ会うようになる。お互い目が合えば挨拶はするし、時間もあれば軽く会話もする。
「相変わらずすごい制服だよね。どこ校行ったんだっけ?」
「言ってなかったかな、呪術高専って所だよ」
「じゅじゅつ高専。言い辛っ」
「wwww」
「オイコラ笑うな」

「聞いてくれ……」
「唐突に現れて唐突に始まるじゃん。聞くけども」
「そう言ってくれると思ったよ」

「いい物食べてるね」
 後ろから、上から覗き込むように夏油君が現れる。
「そのくらいじゃボクは驚かないよ?
 そこそこ有名なとこのワッフルだけど、口直しに食べる?その前に水か何か飲む?」
「……先に水を貰おうかな。用意がいいね?」
「ああ、うん。最近常備してることに気付いた。手が塞がってるので鞄から自分で取ってください」
「はいはい。ありがとう」
「どーいたしまして。塩系ワッフルあるよ」
 仲のいい?顔見知り?友達?ですありがとうございます。


「最近傑の付き合い悪ぃんだけど」
「(めんどい)後でも尾ければ」
「……ショーコ天才!」
 リンディちゃんと夏油君の駄弁り中に乱入するごじょさと。
 まるで浮気現場に現れた本妻の貫禄。
「何だよこのちんちくりん。術式も呪力もないクソ雑魚じゃん。傑、女の趣味悪くなったんじゃねーの?」
「お?喧嘩かな??ちょっとどころじゃなく顔がよくて身長デカいからって許さんぞ?」
「ハッ、ちーび」
「高身長がなんぼのもんじゃ。155cmなめんな」
「悟、小さい者イジメはいけないよ」
「お?全面戦争か??」
 一瞬だけ視覚奪って驚いて固まっているところに不意打ちパンチならヤれる。まだ高校生の最強の片割れならいけるはず。一発お見舞いするくらいならいける。
 あ、でも奪った六眼でリンディちゃんの脳ミソ焼けちゃう……。まぁ、一瞬なら大丈夫か……?
 何今の?て聞かれても知らん顔で通す。見て、見えないなら流石の五条君もわけ分からんだろう。夏油君は仕組みは分からずとも何となく知ってるので、あーあれかって知らん顔する。へぇ、味覚だけじゃないんだなあ。


「初めましてー」
「ひぇ、びじ、美人さん……」
「家入硝子、クズ共のクラスメイトです。よろしくー」
「いい性格してる……、好き……」
「俺たちと反応違い過ぎねぇ?」
「初対面で中指立てられた私よりは良いんじゃないかな」
 リンディちゃんは美少女が好き。最強二人に絡まれるなら、硝子ちゃんとも絡ませてくれ。多分五条君あたりが無理やり引きずってきた。はわわ美少女、いっぱいしゅき。
 ヤンキー君には気付かれてたし覚えられてた。


 ちょっと恋愛観を引っ張られているので、恋愛対象が女の子だったりする。男に告られると鳥肌立っちゃう系女子。
「ボクはぁ!年下で美人で茶目っ気ありのクールな出来る子を、きっと甘えるのも不器用だろうからこれでもかと甘やかして幸せに過ごす人生計画の遂行に忙しいから邪魔しないでいただけますぅ!!?」
「俺じゃん」
「私かな?」
「言いたいことは色々あるけど、お゛ん゛な゛の゛こ゛だよッッッ!!!」
「「wwwwwwww」」

「あ。でも入間君ならワンチャンありかも」
「は?誰ソイツ」
「探せば見つかるか?そもそもいるのか?感覚範囲伸ばせばいけるか?」
「感覚範囲ってなんだよ。テメェ術式持ってねぇだろ一般人。オイ、聞いてんのか?」
「うーん、これは聞こえてないね」
「場所によっては馬鹿みたいに交通費が必要。金、金か。資金繰りしないと。うーん、……バイトよりギャンブルの方が手っ取り早い……」
「「「ギャンブル!?」」」
「え?あ、いやいや。ハハハ、最終手段最終手段」
「最後だろうが手段の内に入れるものじゃないよ?」
「えー……」

_ _
 その程度でボクが思い止まるとでも?
 真面目にバイトに勤しんでもいいけれど、一度くらいは賭け事に興じてみたいと強く思うのはこの“ガワ”の所為だろうか。気が付けば、競馬場に立っていた。まぁ気が付けばと言ってもしっかり計画立てて来たんだけど。

「競馬場に入れても券が買えないんじゃ意味無いじゃん!
 クソクソ、今のレースもボクの予想通りだったっていうのに、目の前でチャンスが走り去っていく……っ。
(……ハッ、適当にそこらのオッサンに頼めばいいのでは?)」

「そこの負け続けてるオニーサン、ボクの代わりに馬券買って来てくれません?当たれば二割差し上げますよ」
「はぁ?」
「(うわ怖)は、半分。半々でいいです……」

 後ろ姿による適当すぎる人選のせいで、顔に傷のあるガラの悪いオニーサンに声を掛けてしまった。不躾な頼みを無視されそうになるも「お金が必要なんです!勝つから、絶対勝つから!!」と泣きついて、報酬は勝ち金の半分で馬券を買ってもらう。一度の儲けは減るけれど、その分回数勝てばいいんですよ。
 今回限りでなく、今後もお願いする気満々である。


「先輩。ガタイのいい男性と金銭のやり取りをしていた件について聞きたいことがあるって、先生が呼んでましたよ」
「何その心当りはあるけど不名誉しかない呼び出し」


***



6/22
- / / -
- Main / Top -
ALICE+