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「レイン!!」
「ガイ!」


煙に飲まれた二人に、カノンノが悲鳴に似た声を上げる。
ルークも痛む肩を押さえながら声を張り上げた。


「ゲホッ、ケホッ…! (どこだ…?)」


煙の中に飲まれたガイは、爆発に気をとられた隙に姿を眩ませたレインを探して周囲を見回す。気配がない。完全に消されたのか。

その時、彼の背後にゆらりと何かの影が浮かび上がる。ソレを感じ取ったガイは、振り向き様に刀を横に振った。


とらえた、とおもった。
だが。


「何っ!?」


刀を伝わり感じた感触は、明らかに人を斬った感覚ではない。
何か固いものを斬ったような、ソレ。
ゴトリ、と刀に一閃されたソレが地面に落ちて鈍い音をたてた。


「はい、ハズレ」


声が聞こえたのは、すぐ耳元だった。
それに目を見開くや否や、ガイは刀を弾き飛ばされる。腕ごと持っていかれたかのような強い衝撃。ビリ、と麻痺した腕に、しまった、と思った。

一瞬、一瞬だった。

気が付けば自分はうつ伏せに地面に押し倒され、今まで刀を向けていた相手は自分の背中に膝を押し付け動きを封じ。腕を背中で捻りあげられ痛みに呻いた。
かろうじてガイが目を開けて見ると、目の前にあったのは氷の壁。
その上部分がスッパリと斬れ、そのそばには巨大な氷塊が転がっていた。
思い出すのは、一番最初。
桃色の髪の少女を助けるために、生み出された術の氷壁。


「(まさか、あの時斬ったのは―――!)」
「残念だったな」


ドス、と目の前すれすれに突き立てられた銀の刃に、ガイは目を見開く。背筋がさあっと冷たくなった。


「チェックメイトだ」


氷のように冷たい、凛とした声に体が震えた。







煙が晴れ、ようやく彼らが見えるようになった時。すでに決着はついていた。
金髪の男を押し倒し、動きを完全に封じたレインに、リッド達から歓声と安堵の息が漏れる。


「レイン…!よかった…!」
「ヒヤヒヤさせやがって…」
「やるじゃない!」
「にゃうぅ…」


仲間達の声にレインは答えず、ただじっとガイを見下ろす。


「…………」
「う…く、くそ……っ!」


自分の下で呻くガイに、レインは感情の読めない目を向けた。
ルークはソレを見て驚愕し、ギリッと奥歯を噛み締める。


「…ガイを、倒した…だと!?…くっ…」


その声に、カノンノ達は弾かれたようにルークを見る。
ルークはヨロヨロと足を踏み出し、ゼェゼェと荒い息を繰り返した。


「あなた、やっぱり怪我を…」


カノンノが一歩踏み出そうとして、止まる。リッドが用心深く周囲を見回すのを見たからだ。

―――まだ、他にもいるかもしれない…。自分達に刃を向けてくる者が。


「いないよ」


だが、そんな考えはレインの一言で打ち消された。


「コイツら以外に俺達を攻撃してくる奴はいないよ。…それとも、手負いの体で向かってくるか?お坊ちゃん」


変わらぬ力でガイを押さえ付けながら、レインはチラリとルークを見やる。
ルークはソレを聞き、腰に携えた剣に手をかけた。
リッド達が臨戦体制に入る。
だが、彼は予想と反してその剣を床に投げ捨てた。思わず目を丸くするリッド達に対し、レインは冷静に彼を見上げていた。


「…お前らの目的は、俺なんだろ?じゃあ連れていけよ」


ビクッ、と体の下のガイが反応した。
ルークはギッとこちらを敵意のこもった目で睨み、言う。


「ただし、他の仲間達には手出しすんじゃねぇぞ!」
「ルーク!バカ言うな!!」


でも、彼は今の状況をよくわかっていた。自分も負けたこの状況、ルークを守れるわけがない。

でも、それでも、守らなければいけなかった。


「頼む…!」
「ルークっ!!」


頭を下げるルークに、リッド達が呆然とする。
その時、レインがゆっくり口を開いた。


「…そもそも敵じゃないって選択肢はおたくらの中にねーの?」


へ、とルークの体が固まった。
重々しい雰囲気はなく、レインの口調は呆れたようなソレで。
はぁぁぁ…とレインは深い溜め息をつき、仲間を振り向いた。


「カノンノ、もういいよー。お前に手を出したこのせっかちさん♥は、ちゃーんと押さえとくから☆」
「イダダダダダダッ!!?」
「ガイ―――!!?」


今までのシリアスな空気を吹き飛ばすようなその声音に、ルーク達は目を白黒させる。だがガイに至っては絶叫。あの体制から腕を引かれると、かなり痛い筈なんだが。
リッド達もポカーンとしていたが、やがてやれやれと言った風にルーク達に向かって歩き出した。
…丁度その時。


「おやぁ、よかった。そちらでも見つかったんですねー。こちらも見つかりましたよー」


なんとも呑気な声が、かれらの耳に入った。
ザクザクと地面を踏みしめてこちらに歩いてきたのは、ジェイドと見知らぬ女性の姿。
レインは二人を見て、ヤッホーと気軽に手を振った。


「ご苦労様でした皆さん。ガイ、ルーク?我々を保護してくれるギルドの方々に、失礼なことはしませんでしたか?」
「「へっ!?」」


なんとも間抜けな声を出して、ルークとガイは固まった。


「ぎ…ギルド…?」
「…じゃあこいつら…追っ手じゃなかったってのか……?」
「ほーぉ?海上交戦を目撃して、純粋な善意()でおたくらを救助しに来てやった俺達に随分な勘違いをなさったものだなぁ…?」


ゴゴゴゴ…と背中に黒いオーラを募らせるレインに、ルークとガイがビクリと震えて顔を青くした。


「正義の鉄槌喰らっとけこの野郎ォォォォ!!!」
「ギャァァァァァァァァァァァ!!!!?」
「うわぁぁぁぁぁガイぃぃぃぃぃ!!?」





※しばらくお待ちください。





「――――で、そっちはその美人さんと合流できたわけだな」
「えぇ、貴女のお陰です」


口から魂が出かけているガイを解放し、俺はすることがないらしいリッドと共にジェイドの話を聞いていた。ちなみにカノンノとイリアは二人を回復中だ。


「ルークならともかく、ガイが早とちりするなんて珍しいわね」
「俺ならともかくってどーいう事だよっ!アイっテテテ…っ」
「ほぉら、動くんじゃないわよっ!」
「ありがとう、助かるわ」
「べ、別に…仕事だしね」


少々荒っぽいながらもティアと共にルークを手当てしているイリアと、死にかけたガイを必死に回復するカノンノ。ティアに微かに微笑みかけられ、顔を赤くしてぷいっとそっぽを向くイリアに不覚にも癒された。ツンデレ美味しいです。カメラほしいな、ルカに売り付けてやりたいぜ←