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ガイとチャットに心の底から同情しながら、クロートのミルクまみれの顔を丁寧に拭ってやる。ほっとくとミルク乾いてガビガビになるからなー…。
でも帰ったら風呂だな。うん。

と、その時。


「たーいさぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


大きな声が、聞こえてきた。
反射的に呼ばれたジェイド以外が全員がそちらを振り向く。
そこには、真っ黒の髪をオレンジ色のリボンでツインに縛ったまだ幼い女の子の姿があった。
カノンノは誰?と言いたげに首を傾げるが、俺はその子の事を(一方的にだが)よく知っている。ちらりとジェイドを見上げると、ジェイドはおやおや、と言いたげな表情で彼女を見つめていた。


「…“大佐”、呼んでるぜ?」


正直かなりの注目を集めている少女は、そんな視線ものともせずにこちらに駆けてくる。ジェイドは溜め息をひとつついて眼鏡のブリッジを押し上げると、いつもの胡散臭い笑顔を浮かべてこちらに駆けてくる少女を見た。


「もー大佐ったら!アニスちゃんを置いてきぼりなんてひどいですよぅ」
「いやー久々ですねぇアニス。まさか本当に追い掛けてくるとは思いませんでした」


嘘つけ、と内心突っ込んだ。その時、アニスと呼ばれた少女がくるりとカノンノを振り向く。カノンノを見た瞬間、アニスは目を真ん丸にして震えだした。


「はうあぁっ!た、大佐が女の子ナンパしてるー!?大佐っついにロリコン疑惑が…!」
「それはガイだけで十分ですねぇ」
「ふざけんなカノンノをナンパなんて俺が認めねぇ」


独占欲の強い方ですね、というジェイドの言葉はこの際無視だ。ついでに誰もガイのロリコン疑惑を否定しないところにもツッコミをいれてはいけない。
と、ここでアニスの視線がこちらに向く。きらりーん☆とアニスの目が光った気がした。


「はうわぁぁぁっ!こんな所に美青年はっけーん!はじめまして、アニス・タトリンでぇす☆」
「え、は?」


思わずポロ、とクロートの顔を拭いていたハンカチを落としかけた。
え、なんでアニスちゃん俺にこんな態度?あ、もしかして俺、男に間違えられてる?
…や、確かに今日はボーイズファッションだけどさ。パンツスタイルだけどさ。確かに今日はカノンノに余計な虫がつかないようにと思ってのこの格好だけどさ(カノンのは可愛い。異論は認めない)、……俺ってそんなに男に見えるかなぁ?

嬉しいような悲しいような複雑な気持ちをどうにか処理しようと葛藤していると、やけにいい笑顔を浮かべたジェイドに肩を叩かれた。


「いけない人ですねぇ、カノンノという女性がいながら」
「え、女持ち?…チッ」


怖っ!
今舌打ちしたよこの子!


「…え、私?」


一方標的にされたカノンノはキョトンと首を傾げて。
俺はうあー…と机に突っ伏した。


「…でも、レインとならいいかも」
「えっマジで!?」


薬と笑ったカノンノの発言に思わず過剰反応してしまった。なんだなんだカノンノ、じゃあいっそ結婚するか?幸せにするよ??


「まぁ、冗談は程々にしておきましょうか」


そんなジェイドの言葉で、取り敢えずこの話題はお開きになった。


「アニス、何故ここへ?」
「本国からのお使いですぅ。陛下が大佐にって」
「そうですか。では取り敢えず、ここではなんなので船に一度戻りましょう」
「カノンノ、俺らも戻ろうか。荷物置きに行きたいし」
「うん!」


にこりと笑って紳士的な動きで手を差し出せば、カノンノは嬉しそうに笑ってその手を取ってくれた。