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…うん?
ちょっと、待て。
今の声、だいぶ聞き覚えあると言うか……。


「…え、ちょ、まさか、」
「するぞするぞするぞするぞするぞおぉぉッ!!」
「ギィヤァアァアァァアアアァ!?」


ガンッ!とガイを突き飛ばし、突如現れた銀髪の美人さんはまるで餓えた獣のように瞳を爛々も輝かせながら凄いスピードで船内に入ってきた。
競歩の世界チャンピオンにでもなるつもりかアンタは。つか足音がツカツカとかそんなんじゃなくてガッガッとかいってたのは俺の気のせいってことでよろしい?
奇声を上げたガイが女性恐怖症で逃げようとしたのと突き飛ばされた勢いとで顔真っ青にして壁にめり込んでるよ。チャットに後で怒られても俺は知らんぞガイ。そしてキール、お前はそこで逃げようとしない。


「するぞするぞ、この船から遺跡の匂いがっ!!伝説に歌われるバンエルティア号が実在するのであれば、きっとこのような…ッ!!」
「そのまさかですよ。驚きましたねぇ、この船についての知識をお持ちとは!」


固く両拳を握りしめ、遠慮なく船内を見回す女性に向かってジェイドは感心したように言う。
それを聞いて彼女は、恍惚とした表情を浮かべた。


「うあああああああ素晴らしいぃぃぃぃ…!とうに失われ、文献の中でのみ見られるものと思っていたが、こんな所で出会えるとはぁ…っ!!」
「り、リフィル先生…落ち着けよ、たかが船だろ?」
「この大馬鹿者がッ!!!」


完璧に暴走していた女性を、後ろから遅れてやってきた鳶色の髪の少年が宥めようと口を開く。
だがその彼は一瞬で女性の見事なローキックにより床にめり込んだ。合掌。


「ロイドォォオォ!お前にはこの歴史的な建造物が今に生きていると言う素晴らしさが理解できていないのか…!いいだろう、この際お前の頭の中にこのバンエルティア号の素晴らしさを一から千まで全て叩き込んでやろう!さぁ教科書を開け!!きちんと暗記しておけ!!」


今ですか先生。
とりあえずその場に正座してガミガミと説教を受けている少年を哀れみの視線で見ていると、今まで事の成り行きを見ていたキールが嘆息した。


「…この前言ってた、船が空を飛ぶって話か?お伽噺を真に受けるなんて、馬鹿馬鹿しい」


お前はあの半泣きの少年を見た上でそれを言えたのか。命知らずな勇者だなオイ。


「その意見ももっともですが、古代の文献について知らなかったご自分を少々省みる必要があるのではありませんか?」
「ぅぐっ……」


ジェイドのもっともな意見に、強がっていたキールがばつが悪そうに頬を染める。
うん、後で書庫室が散らかりそうだな。差し入れついでに片付ける準備しておいてやろう。

押し黙ったキールを見て、ジェイドが改めてナパージュの面々を振り返る。
女性が少年にこのバンエルティア号の素晴らしさを説いているのを些か遠巻きに見ている後から来た二人を見回し、笑みを浮かべた。


「まぁ、とりあえず話を聞きましょう。ナパージュの皆さん、ゲストルームにお通しします」
「(先生に双剣士、それに神子ンビ…か)」


ぞろぞろとホールを出ていく面子を後ろから眺めながら、俺は目を細めた。


「…シンフォニア組、か」


取り敢えずリフィル先生の遺跡モード、やっぱり初めて見たら唖然とするわ。うん。

取り敢えずロイドとコレットかあいーなぁー(←馬鹿)