一年生 夏 ご


先輩の貞操は私のものです



 七月三十一日。

「はるっち」

 試合前、私ははるっちに声をかけた。

「君の兄貴は最後まで勇敢に戦うから、はるっちも出番が回ってきたら、攻撃でも守備でも守りに入っちゃダメ。分かった?」
「苗字さん…(何か、視たんだろうな)。うん、分かったよ」

 私が何重にも巻き付けたサポーターを、動きづらいと言って結局外していたけど一枚だけ残したままにしてくれていた亮さん。それでも怪我の具合が原作と比べてどの程度なのか私には分からなかった。試合に支障は少なからずあるだろう。そしてはるっちの交代もきっとある。私だって同じ一年生の三人が守備の穴になる場面を見たくない。

「苗字! 俺には? 俺にもアドバイスくれ!」
「僕にも」

 抜け目なく沢村くんと降谷くんが助言をせがんできた。ううむ、ウザ可愛いとはこのことか。

「降谷くんは…そうだな、珍しく立ち上がりが良いから、えーと…」
「降谷の立ち上がりが良いだと…!? ゲリラ豪雨の予兆か?」
「ちょっと信じられないね」
「(ガーン)」
「でも今持ってる力も出し切れると思うし、降谷くんに特にアドバイスは思い浮かばないや。ごめんね。あ、でもフォアボールはなるべく出さないように気を付けて」
「俺には!?」

 くりくりのお目めをキラキラさせて見つめてくる沢村くんは期待一色で非常に言い出しにくい。

「沢村くんは……」

 どこまで言おうか、デッドボールのことをどんな風に伝えるべきか考えているうちに俯いてしまい、そんな私を見て勘ぐった沢村くんは次第に顔色を悪くしていった。

「まさかアドバイスのしようがないほど酷いのか!?」
「ううん、逆」
「逆?」
「それって、良いピッチングするってこと?」

 はるっちの発言に頷きつつも口ごもってしまう。

「そうだよ。だけど……」
「…そ、そんな言えないようなことが…? うわああああ! 訊かなきゃよかったーーーっ!」
「ごめんね、沢村くん」
「謝るなよ。苗字は悪くねえ」

 悪くないわけが無い。私がもっとしっかりしていれば、沢村くんにとってもっと良い未来を選択出来たかもしれない。結局私は自分のエゴと思い込みを優先しようとしている。沢村くんにイップスを克服して欲しいって願ってる、私の、エゴだ。

「ううん、上手く助言出来ない私が百パーセント悪いよ」
「そこまで言われると逆に自信無くしちまうぞ」
「え、駄目だよ! 自信持って投げて! せっかく良いピッチングするのに」
「本当か…?」

 こんなに私を信じてくれる沢村くんがイップスになるのを私は止められない。信頼を裏切るようなものだ。後ろめたい思惑を抱えたままアドバイスなんて出来るはずもない。

「……沢村くん、試合が終わっても私を……ううん、私を恨んでも構わないから、自分を責めないでね」
「──!! やっぱり俺何かやらかすのか!?」
「……」
「無言は肯定なんだぞ! うぉおぉ…俺は一体何を…」
「違うの! とにかく、沢村くんに非は一ミリも無いから! 私が保証するよ! それに、まだ来てない未来のことを憂いても仕方ないでしょ。沢村くんの良いところは、逆境でもすごく前向きなところだよ。だからこそ窮地を乗り越える力を持ってる」
「うん。俺もそう思う。栄純くんは自信持って投げたらいいと思うよ」
「苗字…、はるっち…、ありがとぉーっ! 俺はやるぞーーー!」
「あとこの単純さも美点かもね」
「うん、そうかもね」


 そしてとうとう甲子園予選、西東京の代表を決める決勝戦が始まった。

「よっしゃあーー! 倉持先輩が出塁しましたよ! もう一点もらったも同然ですよ!」
「あんた、本当倉持が塁に出るとうるさいよね」

 フォアボールでいきなり先頭バッターが出塁。しかもランナーは俊足の倉持洋一。

「あのリードたまんない! 成宮鳴を惑わせる存在感! 痺れる〜っ!」

「あ、倉持先輩の様子が変わった。盗塁きますよ。…っほら行ったーー! いけーっ! 倉持先輩いけぇーっ!」

「キャーーっ! 倉持先輩カッコいいー! 愛してるーっ!」

 私がいつも通り興奮して叫び狂っているうちに、亮さんが送りバントを決め、伊佐敷先輩は意地で内野を越えた打球。倉持先輩はノースライディングでホームベースを踏み、あっさり先制点を取った。

 しかしその後は稲実に流れを奪われ三点許してしまう。
 亮さんの動きはやっぱりいつもに比べてちょっと鈍くて、それを気にかける倉持先輩も含めて心配になる。強みだった青道の二遊間がここに来て弱点になるなんて。野球の女神様が私の目の前に現れたら掴みかかっているだろう。

 そして六回裏。やきもきしているととうとうあのシチュエーションがやってきた。亮さんは二塁方向へ必死に走るが痛みで鈍る動きでは打球に追い付ききれず。抜けたかと思われた打球は、フォロー体勢になっていた倉持先輩の右手に吸い寄せられるように収まった。そのまま二塁を踏んでスリーアウトチェンジ。

「倉持先輩…!」

 え……何、今の? カッコ良すぎてハート吐きそう。興奮し過ぎて何を叫んだか覚えていないけれど、さち先輩に「自重しろ」と頭をはたかれたことでようやく理性を取り戻した。

 倉持先輩のファインプレーをきっかけに青道全体が息を吹き返したように躍動する。
 七回裏で沢村くんが登板し、八回表の代打ではるっちが打席に立ち、青道はシナリオ通り逆転。

 そしてついに九回裏、やはりマウンドに立っているのは沢村くん。カルロスの打球をレフトの坂井先輩がファインプレーで捕球。そこから、球場全体に「あと一つ」コールが響き始めた。あと、アウト一つ。青道はグラウンドに立つ選手達を始めスタンドの応援席もみんな笑顔が見える。この期待ムードがひっくり返る瞬間を想像してしまうと私はとても見ていられなくなり、スタンドを抜け出した。

 屋内へ入って「あと一つ」コールの音量が小さくなってもやけに耳触りで。それから逃れるように数歩進んだところで立ち止まる。

「馬鹿っ。逃げてどうすんの。見届けなきゃ」

 自分で自分を叱咤して踵を返す。自分が選んだことの結果を。そして自分の業を受け止めなければ、前へは進めない。

「あと、アウト一つ…」

 ゴクリと嚥下する音、それから自分の息が乱れるのを他人事のようにどこか遠くで聴きながら、足をグラウンドへ向けて踏み出した。

 沢村くんはイップスになるけれど、彼ならきっとちゃんと克服して、それを踏み台にして成長する。辛酸を嘗めるような苦い日々かもしれないけれど、これは経験しておいた方がいいと思う。何故なら彼はこの試合で勝負の本当の怖さを身をもって体感出来るのだから。と、さっきまでは、そう思っていた。でも───。

 階段を登るにつれ視界が拓けていく中、カァンと甲高い金属音が球場中に響いた。それを知っている私はそれがとても不快な音に聴こえて思わず耳を塞ぎたくなったけれど、その直後、遠くで右中間を抜けた打球が目に飛び込んでくる。

 審判の「ゲームセット」と宣言する声がやけに明瞭に聞こえた。遠目にでも分かる、信じられないと呆然と固まる青道ナインを見ているのが何より辛かった。けれど表情が見えないだけ幾分かマシだったと思う。

 ───これは経験しておいた方が良いって? 必要なこと? 馬鹿。経験のために犠牲にしていい夏なんて───。

「犠牲にしていい夏なんて、あるわけないのに」

 明日の御幸くん曰く、彼らは力が足りなかったと。だけどエースの故障とアクシデント、セカンドの故障と交代、それらはひょっとしたら私に何とか出来たことなのではないか、そう思えてやるせなくなる。私が一番、無力だ。


 その夜、優勝祝勝会用の豪華な夕食はやはり三年生の心の傷口に塩を塗ったのだろう。嗚咽がそこかしこで聴こえ、箸を取ろうとさえしない部員達。私は、絶対にこの悲痛な光景から目を逸らしちゃいけない。私にはその責任があるから。業を背負うって、こういうことだよ。何も出来ないけど、何も出来ないから辛くて苦しくて、そこから目を逸らしちゃいけない。未来視なんて出来たところで、時間は巻き戻ったりしないんだから。



 翌朝、マネージャーも休みをもらっていたけど気になって様子を見に行ったら、雨天練習場で素振りをしている部員が大勢居た。

「…はは、すごいなぁ。立ち直り早ぁ…」

 この光景を私は昨日負けた瞬間から渇望していたような気がする。この人達には、ただ我武者羅に、雨の日も嵐の日も、例え明日世界が終わるとしても、野球だけに向いていて欲しいって思う。そうしたら、なんだか私まで勇気をもらえるんだ。色々な勇気が湧き上がってくるんだ。

「倉持先輩ーっ!」
「ん? お前、今日は休みだぞ」
「やだな、倉持先輩に会いに来たに決まってるじゃないですか」
「……ちょっと来い」

 倉持先輩は一瞬思案げにした後そう言いながら私の手首を掴んで外へ歩き出した。え?

「え?」

 えええええ……!? なになにこの展開。こんなの予想してなかった。倉持先輩に手──手首だけど──を握られるなんて天にも登る気持ち! でも様子がいつもと違うし、もしかしたらなんか怒られたりするのかな? もしかして、告白もしてないのにフラれるとか? それどころか「もう俺に話しかけんな」って絶交宣言!? やだ嘘でしょ、待って、そんなの勇気どころか生きる希望無くなっちゃうけど私……。

「……」

 私の心情とは裏腹に倉持先輩は黙々と足を進め、いつの間にか私達は誰もいないグラウンドの隅に立っていた。「座れよ」と促され、グラウンドを縁取る低い塀の上、倉持先輩の隣に腰を下ろす。
 いつもなら部活動で賑やかなはずのグラウンドは私達以外人っ子一人居なくて、静けさがなんだか居心地悪い。そこでハッとした。あれ、そういえば倉持先輩と二人きりになるのって、何気に初めてじゃない? やばい、急に……緊張してきた。どうしよう。

「お前…」

 口火を切った倉持先輩に思わずビクッと体が反応した。それを見て笑われる。あ──、恥ずかしいけど、倉持先輩の笑顔が見れてなんだかホッとする。

「ヒャッハ、緊張し過ぎじゃね? いつもあんなにちょっかい出して来んのに。変なヤツ」
「…!」

 言いながら倉持先輩はなんでもない風に距離を詰めて来て、私の方へ体を向けて居直った。足が擦れ合い、互いの体温さえ感じ取れそうなほど近くに。

「え…と、近…くないですか?」

 倉持先輩の一挙手一投足にいちいちビクビクと反応してしまう自分が情けなくて口調も覚束無い。

「……」

 さっきから沈黙が居た堪れない。でもそれは私が必要以上に緊張しているからで、倉持先輩はとてもリラックスしている様子に見える。なんか悔しい。私ばっかり───て、そうか、好意があるのは私だけなんだ。なら、当然か。なんかやだな、好きになったもん負けって感じ。
 二人きりだとこんなに静かになるものかというくらい沈黙は続いたが、やがて彼がその沈黙を破った。

「なあ、」
「っは…い、」
「お前さ、俺のこと…」

 女の直感というやつが働いた。同時に妙な確信もあって、私は咄嗟に「先輩」と声をあげて言葉の続きを制した。

「お願い…。言わないで…!」
「……」

 「好きなのか?」「はいそうです」そう答えたところでたとえ「じゃあ付き合うか」と言われてもそうしましょうとは言えないから。そもそもフラれることは明白だ。だって私は倉持先輩の好感度を得るどころか迷惑しかかけていない気がする。自覚はあるんだ。自己制御出来ないだけで。
 気持ちがとっくにバレているわけだし、それはわざとそう振舞ってきた。だけど私は倉持先輩に同じ気持ちは期待していないのだ。欲しくないと言えば嘘になる。本当は倉持先輩に振り向いてほしいよ。私を見てほしい。私を欲してほしい。でもそれは期待しても叶うべきではないものだ。だから期待なんてしない。希望も未来も要らない。“今”があれば私はそれで充分だ。フラれても諦めるつもりもないけれど、私だって拒絶されるのは怖いから。だから、どうかその先はまだ口に出さないでください。

「私が倉持先輩のこと、大好きって、知っててくれるだけで良いですから。私は、この気持ちが溢れる度にそれを伝えてるだけなんで」
「はぁ? んだそりゃ」
「そりゃあ倉持先輩からしたら迷惑だと思いますよ? でも…でも、こんなに好きにさせたんですから、自業自得です! 私、悪くないですから!」
「ああ゛!?」

 いけない、思わず開き直ってしまった。

「なに開き直ってんだよ」
「だって私、絶対諦めませんからね! でも別に見返りとか求めませんから! それで良いですよね!?」
「良いわけねぇだろ! こっちはもう少し自重して欲しいんだよ!」
「これでも精一杯自重してますよ? 私が自重を放り投げたら、先輩の貞操はもう既に私のものです!」
「……っ!」

 絶句する倉持先輩の唇を奪いたい衝動をなんとか抑え込んで、固まっている彼を置き去りにしその場を後にした。ほらね、私だって、けっこう我慢してるのに。

「もう…心臓に悪い」

 赤くなってしまっているであろう顔を、どこかで冷まさなければ。逃げるようにあの場から離れながら適当な場所を探す間も、さっき目の前に迫った倉持先輩の全部が私の体を燃やす。

「自重して欲しいのはこっちの方だし」



 更に翌日、新チーム始動の日。一昨日の暗い空気が嘘のように一・二年の目は前を見据えていた。ああ、三年生が即部屋を出ていくのはこういう理由からかもしれないな。歩む道が違うということは、見ている先が違うということ。三年生はもうそれぞれの道を歩んでいかなきゃいけないんだ。そして、一・二年生にはまだ共通の目標がある。引退した三年生が下級生から離れるのは必要なことだ。それにしても、下級生だってあんなに泣いてたのにたった二日でみんなもうすっかり新たな一歩を踏み出しているんだから、本当に強い。……いや、心に傷を抱えて調子を崩してしまった選手も何人か居るけど。

 新キャプテンはもちろん御幸くんで、副キャプテンの倉持先輩とゾノ先輩に囃し立てられながら部員を引き連れてランニングを始めた。声出し一つ取っても、数日前までと聞こえる声音が違う。もう三年生の声はどこにも見当たらなくて寂しいような、でも一年生と二年生が生き生きしていて新鮮なような、複雑な思いを抱えた。



 毎年恒例らしいが、残りの夏は体力作りと称してなかなかハードな練習メニューが続いた。その合間を縫って練習試合も頻繁に組まれていく。稲実の試合成績を気にしながらも、みんな各々目標を持って練習に取り組んでいるように見えるし。
 でも太田部長の言う、チームの形がまだ見えないっていうのも分かる。新チーム始動してまだ間もないし、しょうがないことだとも思うけれど、私はどうにも沢村くんが気がかりでしょうがなかった。

 沢村くんのイップスについて御幸くんに話すべきか否か悩んでいるうちに、よそ者は青道へある日突然現れた。

「あ」

 軍曹こと落合コーチを発見した。

「ん? 君は、野球部のマネージャー?」
「はい、苗字名前です」
「そう」

 態度は素っ気ないが、無駄に良い声だなあと失礼な感想を抱いてしまった。

「あの、これから選手達がお世話になります。よろしくお願いします」

 途切れたかに思えた会話を続けたのは、無意識にその声をもっと聴いていたいと思ったからかもしれない。

「ん? 君は知ってるの?」

 そりゃもう色々と知ってます。でもよく考えてみたら、この人に関しての情報が一番少ないかもしれない。うーん、ミステリアス。

「あなたのことですか? それならほとんど何も知りませんよ。初対面なんですから。良かったらこれから色々教えてください」
「…口説いてる?」
「っち、違います! …もう、私だって花の女子高生ですし、恋だってしてるんですからね!」
「へえ」

 リアクションが薄い。かと思えば観察眼が鋭く、人の核心をついてきたりもするんだからこの人は掴めないなあと思う。現実主義者で敵を作りやすいかもしれないけれど、私はこの人を尊敬出来る。だって、この人は思い込みや色眼鏡で選手を評価しない。ただその時その時の事実だけを見て、その分析力で時には自分の意見を覆し自らの進退をもかえりみることが出来る、おじさんにしては素直な為人の持ち主だ。

「君は、片岡監督をどう思う?」

 いきなり迫った質問を投げつけてきた! もう本当に何を考えているのか分からないこのおじさん! 何が知りたいの? どういう意図なの?

「片岡監督ですか? ええと…、そうですね…、片岡監督は選手達個々の、そしてチームの成長を一番に考えていると思います。青道の目標は全国制覇。監督は芯が強い人で、一軍二軍問わず選手全員に慕われて信頼されています。……他に何が訊きたいんですか?」

 最後に私がそう付け足せば、彼はチラリと視線だけをこちらに向けるので緊張感が増す。いやはや、無駄が無いというか隙がないというか。沢村くんが付けた軍曹という渾名はあながち的を射ているかもしれないな。

「君とも良い関係が築けそうだ」

 視線はまた明後日の方向へと向けられたが、「ただ」と、そう強調して勿体ぶった後に続けられた言葉は私を瞠目させた。

「恋に溺れると決まって足元を掬われる。自重することも覚えた方がいいぞ」

 華麗な捨て台詞を残して落合コーチはのろのろと去っていった。その後ろ姿が建物に入って見えなくなったところで思い切り声をあげて憤った。

「あーもう! 最近皆してなんなの!? 口を開けば自重自重って! まるで私が節操無しで分別が無いみたいじゃない!」

 ストレス発散するように一頻り鬱憤を吐き出して息を整えていると、背後で人の気配と足音を感じ取った。

「自覚無かったのかよ」
「く 、倉持先輩! どうしてここに!?」
「それは…、たまたま通りかかっただけだ」
「そうですか。…あの、沢村くん、最近どうですか?」
「沢村?」
「クリス先輩が引退したので、相談出来る人がいないんじゃないかと思って」
「あいつ、なんか悩んでんの?」

 思わず倉持先輩に沢村くんについての気がかりがあることを話してしまった。が、私が先走ってどうこう騒ぐのもなんか違う気がする。

「……悩んでるっていうか、スランプっていうか、不安で空回りしてるような気がして」
「ふーん。よく見てんだな、沢村のこと」
「…え?」

 何か今、私の都合の良い耳には嫉妬してるような発言が聞こえたのだけど、何かの間違いかな?

「そういえば最近沢村ばっか見てるよな、お前」
「…え? あの…」
「いや悪ぃ、何でもねぇよ。沢村には俺が話聞いとくからよ」

 私の混乱が解けないうちに倉持先輩は踵を返して去ってしまった。

「……え? …どゆこと?」

 野球もマネージャーの活動も考えることが多くてそれなりに難しいけど、恋愛が一番難しいです。




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