スワロー島の生活もそう長くはなかった。
数年をスワロー島で過ごした後、島を離れ、ローたちは旅を始めた。身を隠すこと、色んな島で色んな患者を診てオペオペの技術を磨くことなどが主な理由だった。
シロとベポをひとり立ちさせるにはまだ早いとスワロー島から連れ出したが何故かペンギンとシャチまで付いてきてしまった。ローは面倒くさそうな顔をしたが、2人によく懐いているシロが嬉しそうだったため渋々受け入れることにした。
「キャプテンはシロに甘いよなァ」
「そうかな?でも、前の島出る時にオーブン持って行きたいって言ったらダメだって言われたよ?」
「それは荷物になるからだろ?おれが言いたいのはそう言うことじゃなくて…あ、ごめんなんでもない」
「??」
ローの視線に気が付いたらしいシャチが慌てて口を閉ざす。ペンギンは呆れたような表情をしていたがシロだけは不思議そうな表情をしている。
賢いんだか賢くないんだか、空気が読めるんだか読めないんだかよく分からない。
「オイ、稽古の時間だ」
「はーい!」
ローはこんなご時世だからとシロに護身術を叩き込んだ。武術や剣術は軽く嗜んでいたらしく、飲み込みは早かった。なるべくならその手を汚させたくないが、この大海賊時代、何があるかは分からない。海軍なんて信用ならないし、自分の身は自分で守らなければいけない。いつか受けた厳しい指導を元にシロやベポたちも厳しく指導しながら、自分の腕も磨くことだって忘れない。
数ヶ月ごとに島を渡り、拠点を変えながら、ローたちは少しずつ有名になっていく。腕の立つ若い医者が束ねる荒くれ者たち。
いつしかシロは医者と呼んでも差し支えないほどの技術を得て、街にうろつく海賊に囲まれても1人で対処できるようになった。
そしてシロは成長するにつれ、すれ違う者たちが息を飲むほど美しくなっていく。本人も目立つ容姿を自覚したのか、それとも誰かに見つかるのを恐れたのか、いつからか顔を隠すようになった。キャスケット帽を深く被り、大きめのサングラスをかけたその姿は不審者にも見える気もするが、整った容姿から海賊や変な輩に絡まれることが多かったため、その装いに誰も異論を唱えなかった。
きっともう、シロはひとりで生きていける。それに、そろそろ動き出すべきだ。
どうしても許せない男がいる。
あいつを、この手で、刺し違えてでも。
あの人は優しいから出来なかった。でも自分には出来る。あの日、あの島で、あの人が引けなかった引き金を引きにいかなければいけない。
あいつらは何を言ってもどうせついてくる。今までだって何度も突き放そうとしたけれど、どこまでだってついてきてしまう。巻き込みたくないが、怒ろうがバラそうが折れる姿が想像できない。
ーーだけど、シロだけは。
「シロ」
「はいキャプテン」
汚れてほしくない。汚したくない。
サングラスを外し、ローを真っ直ぐ見つめる瞳はいつものように純粋だ。残酷なものを見てきたはずなのに、濁ることなく輝き続けている。
本当はこの子を海賊になんて、ならせたくなかった。
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