「うちの船員が世話になったな…ちなみに海軍ならもう来てるぞ麦わら屋」
「うちの船員…?なんだお前……なんだそのクマ」
ルフィに話しかけた隙を見てハチの元へ駆け寄ると、チョッパーが応急処置を行なっていた。手際が良さに感動しつつ、手伝おうと手を伸ばして、ステージ上の異変に気が付いた。
女性の天竜人がケイミーに銃口を向けていたのだ。咄嗟に刀に手をかけ、前の席の背もたれを蹴って距離を縮めるも、間に合わない。
「ケイミーちゃ、」
悲痛じみたその声を、何かが、かき消した。天竜人の身体が傾き倒れる。どうやら気絶したようだ。
そして現れたのはーー巨人とおじいちゃんと言っても差し支えないような白髪の男性。だがその白髪の男性が只者じゃないことは世間知らずと言われるシロにも分かる。
どうやらその男性はハチと知り合いらしい。
“覇気”で会場内の衛兵を一掃し、素手でケイミーの首輪を外した彼をハチは“レイリー”と呼んでいた。
一体何者なんだ。絶対にただのおじいさんじゃない。キャプテンなら、この人が誰か知ってるかもしれないけど、情勢に疎いシロには何者だか検討もつかなかった。
ハチの元へやってきたレイリーを見て自分はもう用済みだろうと静かに立ち上がる。そんなシロを呼び止めるのはレイリーだ。
「お嬢さん、待ってくれ」
「へ」
「ありがとう、私の友人を救ってくれて」
「あ、いえ……私はなにも……」
ぺこぺこと頭を下げそそくさとローの元へ戻るシロ。周りの視線が自分に集まっていることに耐えられずベポの影に隠れた。
「シロ、後でこい」
「うっ…アイアイ……」
やっぱり今日は夜ご飯を食べられないかもしれない。がっくり肩を落としたシロの頭をベポがそっと撫で、シャチとペンギンは俯いて肩を揺らした。
『犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい!次期「大将」が到着する。早々に降伏する事をすすめる!どうなっても知らんぞ!!ルーキー共!!』
「おれ達は巻き込まれるどころか…完全に共犯者扱いだな」
などと言いつつ特に焦った様子を見せないのが我々のキャプテンである。この先は船長の指示を待とうと事の成り行きを見守っていると見覚えのある赤髪の男が動き出した。
「表の掃除はしといてやるから安心しな」
これキャプテンキレるやつじゃん。絶対大人しくしてないじゃん。と、シロが予想した通り、ローはその煽りに乗り先陣を切るように出て行ってしまった。
「キャプテン行っちまったよ……」
「わたしあいつきらい」
「麦わら?」
「ルフィくんは好き。ユースタスってやつ」
「それキャプテンの前で言うと怒られるぞー」
ケラケラ笑うシャチにシロは唇を尖らせた。
帰ったら怒られるんだろうなと憂鬱な気持ちになりながらも船長の援護をするため立ち上がると、レイリーに背負われていたケイミーがシロを呼び止めた。
「シロちんっ!」
「ケイミーちゃん」
「シロちん、色々とありがとう!」
「ツナギィ!ほんっとにありがとなァァ!!」
「ありがとよシロ、この恩は絶対に忘れねェ……!」
ケイミーにパッパグにハチ。涙ながらにありがとうと何度も叫ぶその姿を見てシロはサングラスを外し満面の笑みを浮かべ、大きく手を振る。
「うん!また遊ぼうね!」
心優しいあなた達にあふれんばかりの幸せが訪れますように。心の中で祈り、すでに戦場になっているだろうハウスの外へと急いだ。
「シロ……?」
そんな中、足を止めた者がひとり。その名をーー
「何してるのサンジくん!いくわよ!」
「あ、あァ……悪ィナミさん……」
黒足の“サンジ”。
シロはまだ、彼の存在に気付いていない。
← | →
BACK