シャボンディ諸島にて――
とある中継を見守る人だかりの中にシロはいた。
そのとある中継の内容は、白ひげ海賊団2番隊隊長を務めるポートガス・D・エースの公開処刑。
そして何故、彼の死を晒す必要があるのか。それは――エースが“海賊王”の実の息子だからだ。
そしてシロがシャボンディ諸島で一時行動を共にした“麦わら”のルフィがエース救出のため海軍本部へ乗り込んでおり、彼はエースの義兄弟で革命家ドラゴンの実の息子だという。シロからしたらそれがなんだ、という話ではあるが、やはり世間は違うらしい。
ざわつく民衆に、シロは眉をひそめた。
「なぜ映像が途切れたんだ!!」
「マリンフォードを映せ!!」
エースの処刑を直前にして途切れた映像。本部側の映像電伝虫にトラブルがあったようだと海兵が叫んでいるが、おそらく故意的に切られたものだろう。
シロはこぼれそうになっていた涙を拭い、動き出したローを見上げた。
「船を出すぞベポ!!」
「アイアイキャプテン!」
どこへ行くのか、なんて聞くのは野暮だろう。キャスケット帽を深く被り直し、気合を入れるように頬を数回叩く。
これはきっとキャプテンの“気まぐれ”だ。
ならそれの気まぐれに乗っかって、友だちを助けよう。
走り出したシロは、もう泣いてなどいなかった。
※
海軍本部へ向かう海底の中、シロはローに問いかけた。
「ねぇ、キャプテン」
「何だ」
「“D”って何なの?」
口を閉ざすローに、シロは続ける。
「ずっと……ずっと秘密にしていたことがあるの」
澄んだ海のような……または、雲ひとつない蒼く澄んだ空のような瞳が静かにローを見上げる。
「勘付いていたと思うけど、わたしはただのシロじゃないんです」
「隠し名でもあるのか」
「うん。シエル・D・シロ。お父様に“D”の名は誰にも言っちゃダメだって言われてたんだけど……ルフィくんとか、火拳さんを見ていたら、気になっちゃった。物知りなキャプテンなら知ってるかなって思って聞いてみたんです」
そう言って小さく笑ったシロに、ローはあの人の言葉を思い出す。まさか、こんなにも近くに居ただなんて。
「おれも“D”については詳しく知らねェし、真相は誰も知らないとされている……が、世界各地の歴史の裏で脈々と受け継がれている名らしい。そして、ある土地では“Dの一族”をこう呼ぶ者達もいる」
“神の天敵”、と――
驚いたように目を見開くシロに、ローは笑った。
「そしておれも隠し名を持っている」
「え、まさか……」
「“D”だ。おれの本当の名前はトラファルガー・D・ワーテル・ロー……ワーテルは“忌み名”らしいが」
「へェ……!はじめて知った!!」
「それはおれのセリフだ。ただの王女ではないとは思っていたが、まさかお前もその名を持つとはな……」
「神の天敵かぁ。神様っているのかな」
「自由かよ」
思わず突っ込んでしまうほど自由なシロに思わずため息を吐く。先ほどまであの中継を見て涙ぐみ、そしてこれから戦場へ乗り込もうとしているのに、緊張感が全くない。シロらしいと言ったらそれまでだが。
「キャプテン!シロ!もうすぐマリンフォードにつくよ!」
航海士ベポの声に2人は振り返り、頷き合う。
「ルフィくん……無事でいて……!」
もう、友だちを失いたくないのだ。
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