- マリンフォード 海軍本部 -


突然、浮上した潜水艦――
その甲板には“麦わら”のルフィと同世代のルーキー“死の外科医”トラファルガー・ロー。その隣にはハートの海賊団No.2と呼ばれる“疾風の女剣士”シロが顔を青ざめさせながら立っていた。

「麦わら屋をこっちへ乗せろ!!!」
「ム・ギ・ワ・ラ・ヤ〜〜!?あァ!!?てめェ誰だ小僧!!」
「麦わら屋とはいずれは敵だが悪縁も縁。こんな所で死なれてもつまらねェ!!そいつをここから逃す!!!一旦おれに預けろ!!俺は医者だ!!!」

ローの隣に立っていたシロは、空を飛ぶ男に抱えられていたルフィを見て小さく悲鳴を上げた。今すぐ手術をしないと、危ないかもしれない。

「赤っ鼻さん!早く2人をこちらへ!!」
「誰が赤っ鼻じゃクラァ!!誰に向かって口を聞いてやがんだこの小娘が!!!」
「急げ!!!2人共だ、こっちへ乗せろ!!!」

急かすシロとロー。
逃げ道を塞ぐように軍艦がポーラータング号を囲む。

「ロー船長!!軍艦が沖から回り込んできた!!」

囲まれるのは分かりきっていたことだ。早くルフィたちを受け取り、海へ逃げないと。焦る気持ちを抑えながら、戦場へと目を向ける。

激しくなっていく戦争。割れる海。響き渡る、不快な笑い声。
そしてシャボンディで見た、あの光――。

「“黄猿”……、!」
「“黄猿”だ!!」

「よしっ!!任せたぞ“馬の骨”共〜〜!!せいぜい頑張りやがれ!!!」

“赤っ鼻”が投げたルフィと“元王下七武海”のジンベエをジャンバールが受け取る。2人ともぼろぼろで、血まみれで、あまりにも痛々しい。泣きそうになるのをぐっと堪え、手術室へ向かって走り出した。

「海へ潜るぞ!!!」

サングラスとキャスケット帽を外し、髪の毛を一本にまとめる。手際よく準備を始めるシロを邪魔するように、あの厄介な光が船内を照らす。

だがしかし、それは放たれることはなかった。

「そこまでだァァ〜〜〜〜!!!!」

海兵の叫びに、海軍も海賊も、動きが止まる。

若い海兵が命を懸けて生み出した“勇気ある数秒”が、世界の運命を大きく変えたのだ。そしてルフィもまた、その“数秒”によって救われようとしている。

「急げ!」
「急いで中へ!!」
「ベポ!ルフィくんをここへ!ジンベエさんはこっち!」
「アイアイ!」

状況はよく分からないが“四皇”赤髪海賊団がこの戦争を終わらせに来たらしい。だがいまは、それどころじゃない。目の前の命を救うのが最優先だ。

「キャプテン!“四皇”珍しいけど早く扉閉めて!!」
「キャプテン!ルフィくんたちを助けないと!!」
「ああ……待て、何か飛んでくる!」

ルフィのトレードマークである麦わら帽子をローが受け取り、ポーラータング号は海へと潜る。

緊急手術。切迫した空気に、シロは細く息を吐き出す。ローのことはだれよりも信じている。船長としても、医者としても。だから絶対大丈夫だ。

「シロ、手伝ってくれ」
「アイアイ!」

ローの指示の下、シロも、他の船員たちも慌ただしく動き出す。たくさんの人が繋いだこの命を救うために。







手術は終わった。が、まだ生きられる保証はないと言うローにシロはそっか、と呟き瞼を伏せた。

「やれることはやった。あとはコイツを信じろ」
「……うん」
「後は休んでろ。表にはおれが伝えてくる」

こくりと頷いたシロの頭にタオルを乗せ、ローは手術室を出ていく。渡されたタオルで血を拭いながら、血の気を失ったルフィの顔を見つめた。

「ルフィくん……絶対、絶対生きるんだよ……こんな所で死んじゃダメだよ……」

縋るように、祈るように声を絞り出す。
そんなシロの視界の隅で、ジンベエが起き上がる。

「ジンベエさん!?まだ起きあがっちゃダメだよ!」
「お嬢さん……ありがとう、命を救われた……」
「いや、助けてくれたのはキャプテンで……ってジンベエさん待って!?動いちゃダメだってば!」
「悪いが、大人しく寝てられんのじゃ……」
「死にますよ?!絶対ダメ!」

ふらふらと覚束ない足取りで甲板へと向かうジンベエの後を慌てて追う。大人しく寝ていられないという気持ちも分かるが、医者の端くれとして目覚めたばかりの重傷者を歩かせるわけにはいかない。

ジンベエの後を追って甲板に出ると、異様な面子が集まっていた。王下七武海の“海賊女帝”に……やたら大きいオカマ?表が騒がしいとは思っていたが、一体これはどんな状況だ。顔を引き攣らせたシロはシャチとペンギンの後ろに隠れ、様子を伺う。

「ルフィくんの心中はもはや計り知れん……あの場で気絶したことはせめてのも防衛本能じゃろう……命を取り留めても…彼が目覚めた時が…最も心配じゃ…」

ジンベエの言葉にシロは俯き、ペンギンのツナギをきつく握りしめた。ルフィは目の前で兄を失ったんだ。しかも、自分を庇って。自分の過去と重なり、息が出来なくなりそうだった。

「シロ、中戻ってろ」
「うん……そうする……」

ペンギンに頭を撫でられ、やっとの思いで足を動かす。ハンコックとベポが会話しているのを背中で聞きながら、ルフィが眠る手術室へと向かった。

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