寒くなってきたから早く帰りなさい。
なんて、小さい頃によく言われてたっけ。
昔は『これくらいへっちゃらだよ』と言ってたが、今は身に染みるくらいに寒い。
「うぅう‥寒い寒いっ、早く帰って暖まろう‥。」
部屋を出るときは寒くなかったのに買い物帰りでなんでこんな寒い思いをするんだ。
あぁもう夕方が夜になりかけてるからか。
もう帰らなきゃ、と帰路に進むと、白いコートの男がこちらを見ていた。
「ん?ニコラ‥?」
「あれ?ユリウス‥もう帰り?」
白いコートの正体はユリウスで、にこりと微笑んでは貴方に近づいた。
寒い中のため、腕を擦りながら近づいて。
お仕事が終わったにしては、少し早いななんて思ったから。
「あぁ、今日は少し早めに帰ってこれてね。にしても‥‥。」
「?」
ユリウスは全身を眺めるようにして私を見た。
なにがあったのだろうかと首を傾げて見つめる。
「こんな格好して、寒かっただろ?俺の部屋でなにか飲んでからにしなさい。」
「へ?そ、それは悪いよユリウス兄さん。」
「ふふ‥俺に気遣いは無用だ。それに‥」
「?」
すっと距離を縮めては、軽く耳元でぽつりと一言。
そのときは優しい笑みというよりは、意地悪を含んだ笑みで。
「“兄さん”じゃないだろ?まだ慣れないか?」
「あ‥。ちょっとだけ。」
「ふふ‥さ、早くこっちに来なさい。」
優しい声に引かれるがままに、手を引かれて。
結局お邪魔することになってしまった。
何度もお邪魔するようになったために、こんな状況でなれてる私もどうなのか。
「ニコラはコーヒーだったか?」
「ううん、私は紅茶。でもミルク入れてくれるなら平気だよ。」
「なら、ミルクコーヒーだな。」
『それくらい私がやるのに』なんて言うもユリウスは『それくらい任せろ』の一点張り。
こうなると断固として折れないので仕方ないと椅子に座っては待った。
暫くしてミルクコーヒーが出来上がるとコトンと優しくテーブルに置かれては『ありがとう』と返す。
一口飲めば優しい味。あ、この味結構好きかも。
「あれ?ユリウス‥‥?」
「ん?」
ユリウスの方に視線を向けると、既に淹れた珈琲に砂糖やらミルクを入れる姿が見れた。
デキる男、クラウン・エージェント、オフィスマンというイメージだったから、てっきり珈琲はブラックかと思ってた。
「ユリウスって‥ミルクと砂糖たっぷり入れるんだね。」
「ふふ‥、意外だったか?」
「ちょっとだけ。なんか意外なとこ見れて嬉しい。」
でも、意外な一面が見れて嬉しいななんて思って笑いかける。
『内緒だぞ?』とそっと耳元で囁かれてはかぁっと頬が赤くなる。
ほんのり甘いコーヒーのはずが、いつもより何割増しで甘く感じた。
甘いミルクコーヒーの味
(ユリウスって絶対ブラック派だと思ってた…。)
(ブラックはルドガーだな、未だに慣れないよ。)
((な、なんか…ちょっと可愛いかも))