(※シナリオブックネタ有)
好奇心、それ自体持つことは罪ではない。
だが、それは時に触れてはならないものをふれてしまうことがある。
そんな恐怖心を抱きながらも、ひとりの女は問いかける。
「あ、あの……ユリウス、さん…。」
「ん?どうかしたのか?」
部屋には自分の恋人であるユリウス。
淹れたばかりのブラックコーヒーが入ったマグカップを手に取ってはそのままこちらを見る。
こちらに向けられる眼鏡越しの青色の目は、とてもとても優しい色。
近寄っては手を伸ばせば届く距離まで近寄って。意を決して、ニコラは告げる。
「あの…変なこと、聞いていいですか?」
「?」
「ユリウスさんのメガネ……ダテ、ですよね…?」
ユリウスのひとつの特徴でもある、黒いフレームのメガネ。
だが、こうして時折私の部屋にも来たり、逆に私がユリウスの部屋に行ったりするんだけど。
ことのキッカケは偶然だった。メガネを外していたにも関わらずに部屋を歩いていたから。
気になってメガネを手に取ってはレンズを覗く。
目が悪いのかなと思って興味本位からレンズを覗いても、度入りレンズ特有の凹凸感はない。
ただ、視界がほんの少しぼやけるだけ。それを意味することはひとつ。
レンズに度など入ってない。ダテ眼鏡だと判明する。
そうなると、メガネの必要性がないのに敢えてかけているユリウスのことが気になった。
恋人、となるのだったら、少しでも知っておきたい。
あぁ、これは好奇心だ。
その好奇心が、時に聞きにくいことだったと知らなかったとしても。
「なんでメガネをかけているんですか?」
「余り目つきがよくないから掛けていたんだがな…。」
あぁ、ニコラ…彼女に、眼鏡をかけるようになった時期だとか、あの過去は教える必要はない。
ただ、目つきが余りよくないから、と言ってくれば十分だろう。
彼女のことだ、あまり詮索はしないと知っている。
眼鏡をかけることで、ひた隠しにしていた事実があると。あんな事実は。知る必要がない。
そういうと、ニコラはこちらをまじまじと見て、唐突に手を伸ばす。
「どれどれ…?」
「っ!ニコラ……?」
そういってユリウスのメガネを試しにはずしてみる。
度が入っていないメガネを外すと真っ先に見れたのはより彩を感じる色素の薄い青色の瞳。
年齢を少し感じさせるような目元。
メガネを外したユリウスって初めて見たかもしれない。
余り見ない光景だから、まじまじと見てしまう。
じぃっと見ているとユリウスはメガネを取り返すべく取ってしまった。
そしてすぐさまにメガネを掛けなおす。
(あぁ…でもメガネを掛けなおす一連の動きもなんだかいいな…。)
「満足したか?」
「うん、満足してる。」
「私…てっきり、ユリウスさんが目が悪いのかと思っていたから……。」
にこりと微笑みつつもメガネを掛けなおしたユリウスを、もう一度まじまじと見上げるようにして見つめる。
『もうメガネは掛けてあるだろ?』と不思議そうにして見てくる。
こちらを見る、とてもとても…優しい青の目。
今ではメガネをしているユリウスをみては、にこりと笑いかけて返答する。
「どちらも好きだな。」
「え?」
「いつものユリウスさんも、メガネを外したユリウスさんも。」
にこりと微笑む。優しい色をした、色素の薄い青の瞳。
その素顔をこのような形で見れたのは、うれしいことだと思う。
「本当に…。」
小さく笑うユリウス。あぁ、こっちの笑顔もすごく好き。
眼鏡をしてても、外しても、好きな人は紛れもなくユリウスなんだと。
改めて、知れたある日のこと。
レンズに映る笑顔
(ユリウスさん、やっぱりメガネしてしまうのですか?)
(メガネを掛ける生活も長かったからな。それにしても…“さん”じゃないだろ?)
(っ!だ、って…ユリウスの眼鏡がないの……その…)
(ん?)
(余り見たことないから、ドキドキしてしまうんです…。)