不本意なできごと
運の尽きだったのかもしれない。
この巡り合わせをカミサマとやらが決めたのだったら、そのカミサマを殴ってやろうと思う。
シグレとの賭けに負けてから早数日。彼から賭けによる命令が一度も来ない。
それなのに、こうも一緒にいる理由はあるのだろうか。
「なぁ、ニコラ。」
「……なんですか。」
「なんだ?随分機嫌が悪いじゃねぇか。」
「当たり前だ。アンタに絡まれてからこっちは困っているんだから。」
まるで逆撫でするような発言にぎろりに睨み付ける。
可愛げのない女だと思うだろうが、私がご立腹なので勘弁してほしい。
結局、戦いの中でしか役割を果たさない私がその戦いに直接参加していない。
治療するものもいない、かといって目の前の男は傷ひとつ負ったところを見ない。
治療士としての仕事を何一つ全うできていない。
(それもこれも、賭けを負けたこともだがそもそも勝ち目のない賭けを受けたのがいけなかった。)
だったら、離れればいい。
そりゃそうだ。できることなら当の昔にやっている。
出来なかった。何度も逃げようとしたら追われる。
追われたら捕まる。
こっそり抜け出した。そしたら行き先にいた。さも先回りしたかのように。
「ひとつ、聞いてもいいかしら。」
「ん?なんだ。ニコラからきくのは珍しいな。」
茶化すな、と一言だけ投げて質問した。
「私と一緒にいるのは偶然なの?」
「いや?」
即答だった。そして、次の言葉も続けるように。
「お前に興味があるからな。」
「………は?」
大柄な男が目の前に来られると中々威圧感がある。
それほどまでに存在感が大きいんだ。
(いや、私が小柄なこともあるんだけど。)
ぐいっと乱雑に顎を掴み視線をかち合わせる。
あまり掴まれると痛いんだが、と睨み付けても痛くも痒くもないらしくただ笑うだけ。
「…痛いんですけど。」
「お前の底に興味がある。せいぜい楽しませろよ。」
その後、大きな出来事に合うなんてとても思わなかった。
唇に熱が重なる。あまりに唐突な出来事で、あまりに不本意な出来事。
された出来事をようやく状況を飲みこみ、理解できた時には熱が一気に上昇する。
思いっきりストレートをかましてやった…がかわされたのはいつものこと。
いつか殴ってやると、決心するのだった。
不本意なできごと
(最ッ低!!殴ってやる。)
(ははっ、受けてやるから来いよ!)