雪の下の円舞曲

現在のニコラは、まさにドキドキの渦中にいた。
だって、手に持っている招待状が語ってるのだから。



「ま、まま、まさか…!あ、あの、あの…!」


(あの、教官からダンスのお誘いが貰えるなんて…!)



そう、ニコラは憧れの人であるマリクに、パーティの催しであるダンスのお誘いを貰ったのだ。
招待状に教官の名前と自分の名前が記載されており、それを見れば見るほど鼓動は増していった。



「でで、でも…どうしよう…!」



お誘いは二つ返事でOKをしたのだが、問題が起きた。
ドレスが、ない。

ダンスなのだから、それ相応のドレスが必要なのは明確。
何せ、公式のお披露目でもあるのだから。なお更だ。



「…そうだ!シェリアに相談しよう…。」



彼女だったら、私と教官の関係も知っているし、何よりこういうおめかしなことに敏感だ。
化粧だとかドレスの事ひとつひとつ選んでくれて、見比べてくれて。

メイクは可愛らしさの淡いピンクをメインに。
ドレスは黒をベースにし、淡いピンクがレースや刺繍で可愛らしい印象のドレスを選んだ。

試しに着てみたが、やっぱり気に入ったデザインもあるからか一発で気に入った。
だが、カーテンを開けてその正面と簡易更衣室にある鏡が挟まれて問題を目撃した。



「ちょ…これ…背中…。」



色合いが自分好みだったが、大きな問題。
選んだドレスが、背中が大きく開いており、セクシーなのだ。

シェリアはなんだか嬉しそうな笑みを浮かべてた。



「シェリア…これ、幾らなんでも背中…。」
「もう少しで教官が来るからエスコートしてもらいなさい。」
「ちょ…!」



シェリアは『頑張って』と言っては声が遠くなり、店を後にしてしまう。
ひとり取り残されたニコラはわたわたとしていると、

ふと、待っていた声が掛かる。



「ニコラ。此処にいるのか?」
「!」

「あ…、き、教官……。」



いつもラフな格好をしているが、公式のダンスだからかフォーマルで決まっていて。
不意にドキッとしてしまいました。



「ほう。随分と…。」
「い、言わないで…下さい。」

「綺麗じゃないか。似合ってるぜ?」
「!」



フッと笑みを浮かべてさらりという彼が凄く男らしくて。

普段女の子らしい格好なんてしなかったから、
女性らしいドレスを着て言われて照れと恥ずかしさが重なった。

その顔を隠すように反らしていると、ぽんと軽く肩を叩かれた。



「さて、行くとするか?」
「は、はい……。」



そのまま手を差し出してくれて、恥ずかしながらもその手にそっと重ねた。
エスコートということなんだけど、今まで教官とこういう事をしないから凄く恥ずかしい。

そのまま会場まで歩くだけ、なんだけど。
やっぱり、自分を誘ってくれたお礼を言いたい。

だけど、手が繋がってる今の状態で、私は今にも爆発しそうで。



「き、き、教官…。お誘い、有難う御座います。」
「たまにはこういうのもいいだろ?」



あぁ、この優しい声が凄く好き。
大きくて、トーンは低いけど柔らかくて優しい。

ダンスなんて時々嗜むくらいで、こんな公のパーティなんて初めてだ。
教官だったら素敵な人だって沢山いたのに。
そんな中で私を誘ってくれたのが凄く嬉しいのだ。



「あ、あの…教官、」
「今日ぐらいは名前で呼んでくれないのか?」

「!」



たまにしか名前を呼ばないが、まさかこういった時に言うなんて。
ボン、と真っ赤にしたが。重ねた手をそっと握って。

そっと、名前を呼んだ。





雪の下の円舞曲
(あ、あの…マリク、さん…今宵は…よろしくお願いします)
(あぁ、ニコラ。今宵はよろしくな?)