Whici is life?
今日は、何と。“あの”父さまが城にいると聞いた。
だがこんなことよりも更に驚いたのはこの後。
“お前に会わせたいものがいるから付いて来なさい”との一言だった。
こんな私に会わせたい人がいるのかと聞きたくなったが、
今まで城に御呼ばれしたことなんて数えられるぐらいしかなかったために、それはそれで楽しみだ。
城の中は如何にも王様って感じだし、少しロマンチックだよなとかいい年して思うのだ。
(いい年と知って言ってもまだ二十歳ですよ。二十歳。)
しかし、一番気になるのは…。
「会わせたい人って…誰?」
「私の上司だ。くれぐれも失礼のないように、大人しくしていなさい。」
「…はい。」
息が詰まる。そう頷けばそのまま俯いた。早く終わるよう願いながら。
唯でさえ嫌いな親。唯でさえ嫌いな騎士団。
ただ、嫌いな騎士団でも…一人を除いて。
窒息されそうな思いまでしそうなことが起これば、ふと彼を思い出す。
(そういえば、彼は…シュヴァーンは何処にいるのだろう。)
暫く長い廊下を歩くと、隣の父の足が止まる。
そしてコンコン、とある一室の扉を叩く。恐らく此処が会わせたい人の部屋なのだろう。
そうすれば入るように指示が入り、キィと扉を開ける。
会わせたい人がどうどか言っているけど、私は生憎興味も何もないわけで…。ないわけ、で…。
「ニコラ、挨拶しなさい。シュヴァーン隊長だ。」
「は…、初めまして…私が、ニコラで…す……。え?」
嫌嫌そうに渋々とうつむいていた顔を上げれば、見覚えのあった顔に思わず目を開いた。
というか、会わせたい人って…シュヴァーンさんのこと?
というか、自分の親って…シュヴァーンさんの隊の所だったの?
色々頭の中がぐるぐるする。
確かに親の話すことなんて我が身以外に全く興味を示さなかったのが悪いけどさ…!
「では。これにて私は持ち場に戻ります。」
「あぁ。」
そう簡単に返せば、敬礼をして部屋を後にした。
…私を残して。
(何で私を残したの父さま!この前起こしたばっかで合わせづらいのに!)
「あ、あの…シュヴァーン様…。」
「私の事はさん付けだったろう?急に畏まったか?」
確かにさん付けだったのだが、先日のこともあり此処が公の場でもあったためについ堅くなる。
そしたらくすりと小さく笑われたため、思わず赤面!
「あぁあ…あの、その…まままさか…自分の親が…シュヴァーンさんのところなんて…。」
「よくノールにはお前の話を聞くからな…どんなお嬢様かと思ったが…。」
「す、すみません…。」
きっと問題でノールの名前が出れば私が真っ先に出たからだろう。
その度に胃を痛めたであろう父。それを全く気にしない私。
確かに彼・シュヴァーンに初めて見かけたのはあの時だけだったし…。
それまでは部下の騎士たちが私のお遊びに付き合わせたとこになる。
自分自身も嫌っていた騎士団が、まさかこういった親しさが出るのは自分の中でも異例中の異例だ。
「そ、それで…私が呼ばれた理由は…どういった…ご用件で、」
「これを渡したくてな。」
「…本?」
首をかしげれば、フッとほんの少しだけ柔らかくなる顔。
滅多に見れないためにこの崩れた表情は目を離さなくなった。
そして渡したいと言っていたという本は余りの重さ、そして分厚さだった。
内容はパラパラと見ても解らないままだが、後で読むことにしようと思う。
「先日の“鬼ごっこ”を覚えているか?」
「…ハイ。」
“鬼ごっこ”
それは私が逃亡する際に巻き込まれる人々が鬼になり、自分は走るという巻き込まれゲーム。
その時の私は敵として認識すれば、気配を辿ってルートを見極めるというもの。
今まで負けなしだったのだが、シュヴァーンにだけ唯一捕まったのだ。
自分ですら気配を読められなかった人。
「ニコラの動きは工夫すれば伸びるからな。」
「え?それって…私に騎士団に入れと?」
「私が言うことではない。だが、真剣に望むなら考えてもいい。」
その時は真剣な目をこちらにぶつけてくる。
あ。この時は隊長としての目なんだな、とじわじわと伝わってくる。
先程の柔らかな会話が嘘のような表情。でも真剣を帯びたこの表情も好きと思う。
それ故に、生半可な答えは出せない。生半可な気持ちでは肯定は出来ない。
「わ、…私は騎士団にはなれないです。」
「…そうか。」
「で、でも…シュヴァーンさんが…望むなら…。」
「私が?」
期待だけは裏切らせたくない、と思った変なフォロー。
でも沈黙が流れる中で妙に汗を流す私に、何を思ったのか唐突な言葉。
「私は…騎士団は嫌いだけど、シュヴァーンさんは好きですから。」
「!」
時既に遅し。ハッとなれば赤面。
きっと先程より赤くなっている。きっとそうに違いない。
何て言えばいいのだろうとわたわたする。そうすればまたクスクスと笑う。
「!…あ、あの…気にしないで下さい。」
「お嬢さんは正直者だな。そして…嘘が下手だ。」
フッと笑い、そのまま自分の手を取ると、まさかの手の甲に受けるキス。
慣れっこではないためにより自分自身が恥ずかしくなる。
どうして、こうなったのだろう。嘘がつけない。と言うより根が正直すぎるのだ。
そんでもって。自分の中で世界が動いた。気がした。
左右人生?
(あの…シュヴァーンさん…。)
(どうした?)
(…まだ…考え中ですけど…。時々、来てもいいですか?)
(あぁ、構わない)