Rain in limitover!


雨は、嫌いだ。雨は空を暗く覆う。
そして涙を流すように冷たい雫が地面を叩く。

その涙は、いつか止むものだって。
知ってはいるけれど、好きにはなれない。


「ニコラ。」
「あ。シュヴァーンさん。」


雨に打たれてびしょびしょになっていると、声がかかった。
その声の主は、聞きなれている人。シュヴァーンだ。

思わず笑みを浮かべて、振り向く。


「どうした。」
「アナタこそ。」

「俺は訓練中だ。」
「ずぶ濡れになっても?」


お互いの体はすっかり濡れて冷えている。
あくまで主従のような関係なのに、下手したら甘い恋人にも見える不思議さがある。

ソレほどまでにニコラが騎士団の人間を信頼の意味でも傍にいることが珍しい。
シュヴァーンも皆が英雄と崇める中で、ただ一人の女性と話すのも余りない。

だけど、それはお互いが上司と部下。
悲しくもその関係を崩していないことで保っていられるからであって。


「体を冷やすよ。風邪ひいたら困るでしょ。」


バサリ、とフェイスタオルを頭に被せる。
勿論範囲は狭いものだし、覆われていない部分は変わらずずぶ濡れのままだ。


「私より強いんだから、体冷やして風邪ひいたら隊長首席様の名が泣くよ?」
「ふっ、すまんな。」

「そうと解ったら、早く戻りましょ?あと体を温めなくちゃ。」


ぐいぐいと相手にも気にもかけず、シュヴァーンの濡れた隊服を破らない程度に引っ張る。
(いや、実際は掛けているのだけれど)

その際に、ニコラはシュヴァーンをちらりと見た。
彼の下ろされている髪が、水を吸収し、ぽたりぽたりと先端が地面に向かって滴り落ちていく。

――― ドクン。

彼の濡れた髪が妙に色っぽく感じてしまい、変な鼓動をひとつ。
そのひとつだけだった鼓動は、次第に大きく回数を増やしていく。


「…?どうかしたか?ニコラ。」
「な、なな…何でも、ない…。」


恐らく理由は解ってない。でもそうやって聞くアナタの声も反則に感じてしまう。
今まで。こんな意識は、していなかったのに…。

やっとのことで、私室に戻ったシュヴァーンはそのままシャワー室に向かう。
その間。ニコラは必死に平常心を取り戻そうと頭を抑える。


確かにニコラは、シュヴァーンのことは好きだ。
だけどそれは恋愛の方向とかじゃなくて、人として好きだっただけ。
それなのに、何故か。今更になって違うことに必死に戸惑う。

違う。彼は帝国騎士団隊長首席。シュヴァーン・オルトレイン。
そして私はそのシュヴァーンの秘書。ニコラ・ノール。

これ以外の関係は、ない。


「…ニコラ?」
「あぁう!!?」


思わず反射条件で奇声をあげてしまった。
それを見たシュヴァーンはくすりと小さく笑ったために更に##NAME1##は赤らめる。

慌てて、冷静を装い。息を整えてはやっと声を上げる。


「あ…し、シュヴァーンさん…。お帰りなさい…。」


簡単に拭いたとはいえ、シャワーを浴びたことにより髪に水滴が滴るほどではないが濡れている。
更に、別の服に着替えたようで私服とまではいかないが、騎士服とは違うラフな格好。
騎士服以外のシュヴァーンを見るのは初めてだったのもあり、変な感じがする。

ドクン。折角抑えたと思った鼓動が、また五月蠅くなった。


「ニコラ?顔が赤いぞ?」
「!」


もう、駄目だ。
私の鼓動がバクバクと鳴り続け、このままヒートアップしてしまえば思わず卒倒してしまう。


「あ、あ、あの…。シュヴァーン、さん…。」
「?」


ぶつり、と。意識が途絶えた。
唯。意識が飛んでも、鼓動の音は相変わらずうるさかった。




水も滴る…?
(あれ…?私…。)
(起きたか?ニコラ。)
(……シュヴァーン、さん…?)