旅とは、サプライズとアクシデントの繰り返しだ。
判っていた。判っては、いたけど。
それを正直に受け止められるかは、話は別だ。
その事件が起きたのは、ことの数分前。
街道に出て、魔物を倒しては稼いできて、そんな中漸くの街。
そこまでは、よかった。
しかし、その街の宿屋で部屋を取ろうと手続きをしたときに、問題が起きた。
「嘘だ‥‥信じたくない。」
「信じたくないもなにも。こちらの宿、部屋がひと部屋しか取れなかったんだ。諦めろよ、なぁ?」
そう。何とか街に着いたのはいい。
が、肝心の宿が一部屋分しか取れなかったのだ。それは、つまり。
彼・アルヴィンと一晩部屋を共にしなければならないのだ。
今までにない、乙女的危機。と言うヤツだ。
「‥‥部屋に入ったら半径一メートル以内には入らないで!」
「おっと、こりゃまた‥。」
アルヴィンは両手を出し、どうどうとするも、私にとってある意味危険であるという事態は変わりは無い訳で。
少なくとも、公の場なら心配はない。一番危険なのは、私が床に就く時だ。
「またはアルヴィンは廊下で寝る。」
「それはヒドくないか?」
「破廉恥をしそうなアナタの傍では寝られません!」
それこそ朝起きたらベッドの隣に居て、何故か覚えもないのに脱いでいて、
ご一緒に彼も脱いでいた、なんて事態…。ああ有り得たくない!
「しそうって‥。まぁ、あるかもな?」
「だから言ったでしょっ!だからダメなの!」
「でも、おたくだからだぜ?」
益々警戒しなければならなくなったというのに、この男はどこか嬉しそうに笑って。
それに全く追いつけなくて。なんとも間抜けな声をあげてしまった。
「は?」
「俺の思い通りになりそうでならないご主人様。その方が楽しいだろ?」
立場的に依頼人であるのは私だというのに、まるでソレをも楽しんでいるような言葉。
この余裕さにイライラしてしまうけれど、どうも口だと私はとてもじゃないが勝てなくて。
ついつい私が馬鹿のように乗っかってしまうのだ。
「ばっ、バカじゃないの?!だ、だれがアンタなんかと。」
「案外満更でもなさそうだぜ?」
ニヤリと笑みを浮かべるその様は、どこか意地悪で。
どこか、どくんと鼓動を乱してくれるような感じがして。
「そ、そんな‥わけっ、」
「ほら、顔赤いぜ?」
腕を肩に乗せられ、唯でさえ近い距離が更に縮む。
ずしりと腕の重さが肩にのしかかって、彼の重さをも感じてしまった。
彼の、アルヴィンの重さをずしりと。
目線も合わせられなくて俯いては誤魔化そうとしたけど、顎を添えられてくいっと視線をあげられてしまって。
かちり、と目線が合った。
「俺は別に朝起きたらニコラが隣にいてもいいがな?」
ハスキーに囁くその声と、ずしりと肩に感じる重さ。
そして何を考えているかわからない不思議さを魅せる目。
相変わらず、私が雇った傭兵さんは。なんとも破廉恥だ。
オモサ、ズシリト
(は、離れてください…っ!)
(んー。そう言われてもご主人様、満更でもなさそうだし?)
(馬鹿馬鹿馬鹿っ!囁かないでよっ!)