真心・下心?

それは本心?
だとしても、心臓に悪いです。



一部屋しか取れなかった宿で一泊して、迎えた朝。
柔らかい陽射しにゆっくり目が覚めて、ふあ、と軽くあくびをする。



「ふあ…。朝…か。」



一日とは、寝てしまえば早く終わって新しい日が来る。
今日は特にこれといったことが無いしで、何をしようかぼやけた頭で考えている時に。

とある、異変に気付いた。



「…ん…、あれ…?」



ふと、ニコラは気付いた。此処のベッドが、心なしか狭い気がする。
いや、シングルベッドなのでひとりで寝るには丁度良いサイズのはずなのに…。

そのニコラ自身抱いていた理由が、この後判ったのだが。



「…ン、…。」
「!?ま、…まさ、か……。」



覚えのある声が後ろから聞こえる。それに、何故か私を抱きしめるような腕の感触。
ちらり、と何とか首だけ動かして背中越しに居る人物を見る。

漸くして見れた顔に、硬直した。
この事態を、受け入れたくないと思っていたからだ。



(後ろに、いるのって、あ、あ…アルヴィン?!)



なんてことだ。
覚えのない事態。想像もしたくない事態が起きてしまった。

しかも。彼の後ろから抱きしめられる感触が、妙にリアルに感じた。



「え……?」



視界をちらりと外すと、お気に入りと話していたスカーフと上等のコートは掛けられていた。
つまり、いつもよりは薄手であるということ。

コートを纏う彼の感触とは違く、それが妙にリアルを感じてしまって。
ましてや、ニコラ自身もいつもの格好とは違い、薄手のキャミソールで寝ているので。

コレを傍から見れば、事実上よからぬシチュエーションが思い浮かぶのは目に見えている。
なんとかこの状態を打破しようにも、肝心のアルヴィンが起きてくれない。



(どどど、どうしよ…!近いし起きそうもないし離してくれないし…!)



必死にアルヴィンが起きるようにと念じてみた物の、その気配は一切無くて。
寧ろ起きそうで起きないもどかしい動きでもぞもぞとして髪やらが当たってびくりと震えてしまう。

そして、私を抱き枕のようにぎゅっと抱きしめて距離も縮んで。
静かな寝息をも首筋に当たると更に煩くなって。



(早く…早く、起きてよ…っ!)



私の心臓の音だけがやけに煩くて、何とか平常心に戻りたくても戻れなくて。
やけに急かされている気持ちに陥る。

必死に耐えて目を瞑っていると、フッと息が吹きかけられる。



「ひゃあぁっ?!」
「何考えてんだ、ご主人様のニコラちゃん?」

「!!あ、あ…アルヴィン!起きてたの!?」
「んー、そりゃなぁ。」



顔は見えないけれど、きっとニヤニヤとしているに違いないだろう。
だけど、どこか寝起きの所為か声は低い。

男性独特の低さにどくんと鼓動がなった。



「なぁ、ニコラ。」
「…っ!な、に…?!」

「なんでこうなったか知ってるか?」
「…し、らない…っ。」



意地悪く囁くその声。するりと撫でられる手。
表情は背中越しで判らないのに、きっと表情は目に浮かぶ。

恥ずかしくて恥ずかしくて、耳まで真っ赤になる。
きっと私の声色でアルヴィンは読めて、判っているんだろうけど。


「…そりゃ、ご主人様を守るのが俺の役目だしな?」



下心アリアリな台詞。それをハスキーな声で耳元で囁いて。
ぎしりとベッドのスプリングがなって。

離れたいという気持ちの裏腹に、何かがちくりと刺さる。
それはココロだということは、まだ知らない。






真心・下心?
(だ、だめだって!離れてよっ!)
(離していいのかニコラちゃん?俺はこのままヤりてぇことあるんだけど?)
(せ、セクハラですっ!)