リミッター事件


ある意味、悪夢にも思えた。
最悪のケースを、迎えてしまったのだから。



それは、ニコラ・ノールとアルヴィンがまさかの部屋が一緒だという事態から始まる。
半径一メートルは離れるように言ったはずだったが、目が覚めればベッドの隣にはアルヴィンがいた。



「あ…有りえない…。有り得ない…!」
「有り得なくないぜ?ニコラちゃん?」

「だだ、だってベッドに居たなんて…!」



しかも。彼女はこういった手には滅法ダメで。
目が覚めたらまるで自分は抱き枕にでもされたかのように、後ろからアルヴィンに抱きしめられる形で寝ていたという。

(だから廊下で寝てといったのに…いや、流石にそれだと可哀想だけど)



「おたくはベッドで俺だけ廊下なんてないだろ?」
「そ、そりゃ…そうだけど…。でも…冗談で…。」

「ふぅん?」



その意味深を含んだ笑みにぞくりと震え、スッと距離を縮めてくる。
尚、二人は以前にベッドに入ったままだ。

ソレを必死に避けようと逃れるが、不思議とベッドから出る事はしなかった。



「きゃー!ちち、近づかないで恥ずかしい…っ!」
「恥ずかしくねぇだろ?」

「だってアルヴィン何も着てないじゃない!」



そう。最初は薄手のシャツを一枚とか着ていたのかと思っていたけど、
実は、その想像を上回る上半身裸!

見えなかったとはいえ、油断しきっていた私も悪いのだが。
アルヴィンを改めてみれば、なんともまぁ隆起した身体は私にとっては目の毒で。

顔は既に茹蛸状態だ。



「…なぁ、こっち向いてくれよ。」
「やだ。」



一刀両断。すっかりと主従関係が崩されたような感覚だ。
(いや、そもそも主従ってそんなに深くは捉えては居ないんだけど…。)

唯の依頼人と傭兵。
そんな二人の関係が、なんとも今ではいかがわしくイケナイ関係というヤツに思えてしまって。

それを思い出させるような過去ばかり頭に過ぎって、反射的に顔を赤らめてしまう。



「っ!」
「こっち見てくれよ。」

「だだ、だから恥ずかしいんです!」



必死に拒んでいたのに、顔だけこっちに向けられて真っ赤な顔が丸見えだ。
幸いシーツでニコラの身体は隠してはいるが、その上からはアルヴィンが抱きしめてくる。



「恥ずかしいってな…。ニコラが寝ていた間にあんなこともしたのにな?」
「!!あ、あ…あんな、こと…って?!」



全く覚えのない言葉をさらりと上げられて、ニコラは思わず固まる。
これを聞いてしまえば、戻れなくなるというのに。つい、訊いてしまうのは悪い癖だ。



「あれ?おたくはそんなことを訊くんですか?」
「ひあっ!耳囁かないでって…!」



恐らく自分の弱点(と思われる)耳に息を吹きかけられて、
トドメにはワントーン低い声で囁かれる。



「俺はニコラの色んなところを散々見たってのにな?」
「〜〜〜ッ!!」



もう、リミッターが切れる瞬間だ。というより、色々限界。
このままでは、彼の。アルヴィンの。思うが侭にされそうな気がして。



「き…き…。」
「き?」

「教育的指導ぉぉおおお!!」



この後、宿屋のとある一室で地震が揺れたのかと思われるほどの
ちょっとした事件が起きたのは、言うまでもない。





リミッター事件
(アルヴィンの変態っ!えっち!!)
(ンなことでいちいち騒ぐなよ。同じベッドで寝たぐらい。)
(それ以前の問題なんです!)