葡萄酒の口付け


普段だからこそないのだけれど。
それが、彼女の意識下にあればの話。



「ニコラ。」
「ん?」

「折角だから飲もうぜ?」
「これ…お酒?」



渡してきたのは一本の瓶。
ラベルから見れば、中身はお酒のようでこれをどのようにして手に入れたのか。

恐らくワインだと思うが、経緯を持ったまま問いかけた。



「コイツは結構美味いんだぜ?」
「へぇ‥どうしたの?これ。」

「今回の報酬で貰ったんだ。たまにはいいだろ?」



あ、そっか。そういえば街で依頼として頼まれていたっけ。
なんてぼんやり思い出しては自分の中で納得した。



「あ…うん、いいね。それも。」



折角貰った物だし、このまま運ぶわけにもいかないから飲んでしまおう。
そう思ったので、彼の提案に頷いた。

ワイングラスを宿屋から借りて、グラスに注がれるのを楽しみながら見つめた。
ホラ、と促されれば乾杯とグラスを鳴らしゆっくり飲む。



「…美味しい。」
「ん、美味いな。」



いいもの手に入れたなと横で思いながら、ワインを傾ければ彼も同じように傾ける様子がなんか大人っぽい。

‥‥‥あれ?
こんなこと思ったっけ?

でも、大人っぽいし、なんかそれが原因でカッコよく見えるよね‥。



「ねぇ…アルヴィン。」
「ん?」
「キス…しよ?」



飲み楽しんでいたアルヴィンの手が止まる。
自分からキスをすることはよくあるが、彼女から言うなんて思いもしていなかった。



「どうしたの、いきなり。」
「キスしたくなっちゃった…、だめ?」



きゅっと袖を掴んで、上目遣いのように見つめる目はどこかとろんと蕩けて。
頬はほんのり赤い。
そんな彼女の両頬に手を添えれば、熱いとすぐにわかった。



「…酔ってる?」
「なんかふわふわしてるー。」



ふわふわとしてるという反応からすれば、確実に酔っているだろう。
だが、酔ったところは普段見れないために興奮するのも事実。

ましてや、自ら寄り添うところなんてこうでもなければ見れない部分で。



「くっくっくっ、ご主人さまのご要望ならば。」



酒の勢いとはいえ、彼女からのキスなんて中々ないもので。
ちゅ、とリップノイズを立ててそっと押し倒して。
少し艶っぽくなっていた少女に思わずどきりとして、何回も唇を重ねた。

その度に頬を赤らめるところはついつい愛しさが増した。
キスは、ほんのり葡萄酒の味がした。





葡萄酒の口付け
(昨日は可愛かったな、ニコラ。)
(はい?昨日…、なんのこと?)
(ま、まさか…覚えてないわけ?)