気紛れからの嘘
最初は、唯の気まぐれだった。
ただ、コイツとの色が何となく合うなと思っただけだった。
普段から、あんまり女らしい格好していなかったから。
せめてもの、となんやかんやの付き合いの意味も込めて。
「おい、ニコラ。」
「ハイ?」
「これ、やるよ。」
ぽいっと投げやりに渡してきたのはネックレス。
真ん中には、紫色のやけに綺麗な色をした宝石のようなものが埋め込まれていた。
一見すれば高価そうに見えるだろう。
実際それなりにしたが、特に俺からすれば問題はなかった。
ネックレスをまじまじと見ながら、ちらりと俺を見る。
「なんで…私に?」
「そりゃ…気まぐれ?」
『何で疑問詞で返してくる』とニコラは笑いながら言うが、それは本当だ。
いや、本当なのか嘘なのかも怪しい。
それぐらいに、判らないからだ。
「じゃあ…貰っちゃうよ?」
「あぁ、構わねぇぜ。ご主人さま?」
惹かれたかのような声色で肯定を促していくと、いつものように笑って肯定する。
ネックレスの金具を外し、首にかけようとする。
しかし、慣れてないのか中々付けることが出来ず唸る。
「うー…。」
「……何やってんだ。」
「これ、慣れてなくて…。」
「少しは女の子らしくしなさいってこと。」
いや、見た目は正真正銘の女の子ではあるのだけど内側は至ってそれらしいのを見せない。
彼女もそれなりに生きていたはずだから、ネックレスのひとつやふたつ人生で経験しているだろうと思ったがこの展開。
「貸してみろ。」
「!」
持っていた紫のアクセサリーを手に取って首の後ろに回す。
女性らしい長い黒い髪が邪魔しないように、前にかけて項の部分を露にする。
綺麗な後ろ姿に思わず邪な感情がよぎったが、これを実行すれば確実に制裁が下るだろう。
それをなんとも今は疑問にすら思っていない、今の俺のご主人さま。
過去に何度やった事かと、忘れてはいないだろうというのに。
コイツは、何度も何度も疑う事はしない。
まるで。信じきったかのように。
「ほら、出来たぜ。」
「早いね。アルヴィンって…そういうの慣れてるの?」
「あれ?妬いた?」
「誰が妬くか。」
『ばかっ』と頬を赤らめて照れ隠しに言うニコラは矢張り可愛らしさがある。
元々整った顔立ちはしているしで、女の子らしい仕草や格好をすれば男との付き合いのひとつやふたつあるだろうに。
前聞いたら『一回もないよ』なんて返す。
そんなこと、俺からすれば『嘘だ』と思うぐらいに。
「でも、ありがと。大事にする。」
そういって、壊さないようにとシャツの内側に入れる。
ちらりと輝く紫が、何処となくニコラに合うように見えた。
気紛れからの嘘
(アルヴィンって、思えば思うほど不思議な人だよね)
(ん?何…。俺に惚れちゃった?)
(違うって。不思議だから余計に知りたくなっちゃうってこと)