多分、それは恋焦がれ。
だけど、想像していたものが返ってくるとは思いもせずに。
「多分…好き、なんだ…よね。」
与えられた私室でひとりごちる。
彼女の部屋はあくまで旅客船のため、彼女の私物を少し置いている以外はまったく他の部屋と一緒だ。
そんな空間でひとり。
彼女が考えてたのは、ジランドのことだった。
何故か判らないけれど、この旅客船に居候と言う形になっている。
彼女の名前はニコラ・ノール。
彼は咎めることなくこの場に留まることを許可してくれている。
理由は、未だに判らない。
だけど、彼のことだからよからぬことを考えてるのは大体あっていると思う。
「おい、ニコラ。」
「っ!は、はい…っ!」
私室にいることは、何で分かっていたのだろうか。
確かに訓練室か私室かジランドさんの私室かで他はふらふらしている。
「あ、あの…一体……。」
「…ちっ。」
軽い舌打ちを聞いた直後に襲われた鈍痛。
丁度位置としては鳩尾。
「ど…、して…。」
その応えは結局聞けず、視界が段々真っ暗になる。
理由も判らず何故か不意を突かれて、気付けば意識は闇の中に堕ちた。
*
「ん…、あ…れ……。」
ゆっくり目を開ければ、見慣れた天井。
起き上がり、辺りを見渡せば自分の部屋だった。
何故記憶が途切れてしまったのか、ひとつひとつ思い出す。
「あれ…、確か…ジランドさんが入ってきて…それで…。」
急に、鈍痛が走って意識が消えた。
誰に?そんなの決まって……。
色々考えていると、ふと、首に違和感。
「!」
「起きたか?」
ガチャと開けて入ってきたのは、主のジランドさんだった。
そうだ、彼に何故か襲撃されたのだ。
そして、首の違和感を取り付けた、
「そ、そうじゃ…なくて…。なんですか、コレ…!」
「気に入ってくれたか?」
ニヤリと笑みを浮かべてきたのは、チョーカー…と呼んでいいのか。
見た目からは少し洒落てはいるが、まるでそれは…首輪に近い気もする。
「な、なんで…また、急に…。」
「そろそろてめぇにも自覚させようと思ってな。」
くい、と指を手前に動かされると身体が勝手に“動かされる”。
この表現は正しい。
だって、自分の意思関係なく彼・ジランドさんの方へ足が動いてしまうのだから。
自分からこんなに距離を縮める事なんてしないのに、自分の意思とは無視で距離を縮められた。
気付けば、目の前にジランドさんはいた。
ひんやりとした冷たい手が、頬に添えられる。
「ちょ、冷た…っ。」
「さて、自覚のお時間だぜ?ニコラ・ノール。」
「っ!んぅ…!」
唐突な、乱暴な、キス。
離れようとしたがこれも意思が身体とリンクしていなくて、まるで奪われたかのように。
口を薄く開き、ぬるりと侵入される舌に、びくりと体を震わせる。
何とか回避しようとするが、後頭部を抑えられてキスは続行する。
気になってしまったことがあるのに。
名前をフルネームで何で…。名乗った事は無かったのに。
なんで、それを知っている…?
そう考えたくても、持って行かれてゆく。
「ふぅ、ン…ぁ…っ。」
咥内を蹂躙されて、まるで犯されるような感覚。
慣れない行為に段々と意識を持っていかれる。
意識も酸素も薄れていき、ぼうっとしていたが漸く開放された。
目には涙をじんわり浮かべていた。
それなのに、それに益々煽られたかのように、意地悪な表情で笑う。
「なんだ?キスのひとつも慣れてねぇとはな。」
「あ…ぅ、…も…許し、て…。」
悪い事なんて、何もしていないのに。なんて思うも彼は一向に止める気はないようで。
息は絶え絶え。浅い呼吸をひたすら繰り返して、うっすら涙まで浮かべる。
それを面白がるように深い笑みを浮かべ、ひんやりした手が頬に這う。
「さて、どうするか…。」
「!」
「この様子だと経験すらなさそうだしな…?」
経験の言葉に思わず首を傾げたが、この直後に何となく判ってしまう事になる。
ひょいと身体を持ち上げられ、向かう先は…。なんと寝室!
(えっ?!ちょ、これ、本気なの?!)
そんな頭の中がパニックな中で、ドスンと落とされる。
下ろすとかじゃなくて、落とされた、という表現が正しい。
「ちょ…っと!ジランド、さん…!」
「くくく…。キスと一緒にこっちも序でに経験しちまうか?」
さり気なく腰を撫でる手がいやらしくて、ぞくりと震えた。
ニヤリ、といつもの笑みは示す物は実行の証。
くいっと顎を上げられ、また奪い貪るようなキス。
これが、合図のようなものだった。
奪われた操り糸
(なっ、何を急にこんな…!)
(ニコラ。てめぇを俺に捧げる覚悟があるなら受け入れろ)
(う、受け入れって…ちょ、なに!?)