ホット&クール
日常となりつつあるものが、
突然なくなったりしたら・・・。
「おい、アイツはどこ行きやがった。」
ジルニトラの部下たちにイラつきをぶつけながら聞いては、廊下を歩く。
不機嫌な様子で辺りを探す男・ジランドはイライラとしたところをはっきりと表しながら人を探していた。
誰を探していたなど、大体予想がつく。
「おい!ニコラ!」
そう。ニコラ・ノールのことだった。
いつも頼みもせず断りもなしにほぼ居候としていた彼女のことだ。
いつもいつもちょっかい出す彼女だからこそ、いないといないで落ち着かないものだ。
だからだろうか、こんなにもジランドがイラついてしまうのは。
彼を怒らせては、辺り一面氷の世界に早変わりするだろうに。
「てめぇ、こんな所にいたのか。」
バン、と荒々しく彼女の私室に殴り込めばベッドに人影。
ずかずかとベッドまで近づけば、人影は探していた人・ニコラだとわかる。
相当イラついていたからか、ジランドの足跡には霜が残っていた。
「…何してやがる、ニコラ。」
「……あ、う…ごめんな、さい…。」
ニコラはいつもみたいな過剰反応はなくゆっくりと此方に視線を移して言葉を放つ。
彼女の謝罪にはいつもみたいに煩いほどの反応はなく、寧ろ弱っていた。
頬は赤く火照っており、呼吸は少し浅めに感じた。
「何があった。」
「風邪…ひきました。」
「ったく、ガキが…。」
ジランドさんはため息を付いて、手袋越しの手が額に当たると、ひんやりしてて気持ちがよかった。
それと同時に、触れられているという事がわかって、火照った顔は更に赤面した。
「あ……ぅ、ジランド、さん…。」
「結構高いな。さっさと寝てろ。」
別に、用事が特にあったわけでもないので状況が分かれば部屋を出ようと翻す。
…が、咄嗟にくいっと肩布を掴んで、弱弱しい声をあげた。
「ま、待って…くだ、さい…。」
「…あ?」
切な願いに鋭い視線で返してくる。
特に何も考えてはいなかったが、なんとなく、離れて欲しくなかった。
「手、貸して、ください…。」
じっと見つめると、ジランドさんは此方に身体を向き直しそっと手を頬に宛てる。
その手は源霊匣の影響を受けて冷たくなっていたが、
今のニコラには、その手がひどく気持ちよくて安堵の息を漏らした。
「…こうか?」
「はぅ…冷たい…。気持ちいい…。」
熱い熱を奪って欲しくて、ジランドさんの冷たい手に自分の手を重ねてゆっくり目を瞑る。
好きな人の手に触れられた事も嬉しくて、本来の自分なら赤面でもしただろう。
今までいえなかったのに、今こうしている自分がいるのは、
熱のお陰かもしれないと少し内心で感謝した。
そうすると、段々つらかったのが楽になれる気がして、気付けば、意識を深いところまで落としていた。
「おい、ニコラ。そろそろ…。」
「……すー……。」
「…ちっ、ガキが…。」
眠ってしまったニコラの手を乱暴に払うことなく、そっと離れる。
源霊匣の影響で冷たかった手が、あったかくなっていた。
ホット&クール
(おい、セルシウス。)
(はい、マスター。)
(こいつに氷嚢を作ってやれ)