居候仕事人


居候生活も長いこの頃。
流石に何もしないのもアレなので。



「失礼しまーす‥‥。」



コンコンとノックをしたものの、声どころか人の気配がない。
恐る恐るあの人の部屋の扉を開ければ、誰も居なかった。

ジランドさんのアジトでもあるこの旅客船に居候と言う形でいるが、
正直訓練と生活時間以外は結構あって、その時は退屈で仕方が無かった。

居候の身であるから、本当ならば許可が下りてからしたかったのだけど、
誰も居ないなら、勝手にやるしかあるまい。
(十中八九の確立で蹴られるか何かしらの制裁は下るだろうけど。)


でも、コレは、ささやかなお礼だから。



「うしっ、やるか。」



取り付け棒をくるくると回しながら、モップを取り付け、
ホウキを片手に、ニコラは奮闘しだした。

(意外に結構綺麗に片付かれているから、取り敢えず綺麗にしよっと。)


少し時間がたった頃――。



「おい、アイツはどこに行った。」



当人は掃除をしているなど誰も知るはずもなくこう至る。
ジランドは何やかんやで、ニコラという存在を認識はしていた。

ニコラはリーゼ・マクシア人であるにも関わらず、
この場所にいては、この場所を拠点をしてはあちらこちらに旅を繰り返す。

何かに利用するなんぞも考えなくて。
この腹の内にある心境は、本人しか知らない。



「ニコラ‥?」
「あ、ジランドさん。」



くるっと振り返れば明るい表情で笑みを浮かべる。
あからさまに、していることは分かるのだが。



「‥‥俺の部屋で何してやがる。」
「何って‥掃除ですよ?」

「ンなこと訊いてンじゃねぇ。」



黙ってやったことに怒っているからなのか、声色からにして不機嫌な彼。
このままだと氷付けにされるかも、なんて思った。

なので笑っておどける。別に変な企みなんてなかったから。



「やだなぁ、日頃お世話になったお礼ですって。」
「礼‥?」

「色々ありましたけど、ここに居させて貰ってるのでせめてのお礼です。」



正直時間が勿体無く感じた、から始まったことなのだが
よくよく考えれば居候のみだという事を思い出す。

自分は唯の人間であるので、出来る事といえばコレくらいだ。



「家事くらいかは、お手伝いしようかな‥なんて。」



まるで家政婦みたいだ、なんて自分自身でそう思う。
だけど、ここにいられる理由を見つけたくて始めたのだから。

少しでも、役に立てたらいいのに・なんてことも思いながら。



「ほう?やれんのか?」
「んー‥並大抵くらいなら。」



なんだか、彼の表情はどこか物珍しそうに思えた。
(え?私そんなに出来ない人とかに思えた?)

くるりと翻し、ノブに手を掛けると横目でちらりと。
此方を見られて、どくんとまた鳴る。



「フン、ならてめぇを置く代わりの仕事として与えてやる。」



『精々励め』と付け足されてニヤリと笑みを浮かべ、
後にしてしまうと、急に頬の熱が急激に上がる。

少しでも、認めてくれたという事実が嬉しくなって、熱くなった頬を両手に包んだ。





居候仕事人
(言っておくが俺は厳しいからな。塵一つ残したら追い出してやる。)
(ちょ!厳しくないですか…!)
(くくっ、なら追い出されねぇようにするんだな。)