Place to stay


褒められたい一心で、始めた事。
だって、少しでも一緒にいたいから。



「さて、次は…と。」



ポケットに入れておいたメモを取り出して、終わった部屋に線を引く。
ルンルン気分で部屋に向かうため、覚えたての記憶を頼りに廊下を歩いた。

今ニコラが行っていることは、言うまでもなく掃除である。

元々自己申告から勝手に始めた事なのだが、これはコレで気に入ってた。
彼・ジランドさんの手助けに。少しでも置いてもらえる理由になるのなら、雑用絡みでも喜んでやった。

だけど、彼女の難点といえば。



「お仕事お仕事、と。」
「おい、ニコラ。」



夢中になりすぎるということだ。
だから、夢中になりすぎて声を掛けられている事にも全く気付かない。

しかも、声を掛けてくれた人物すらも気付かない。



「…おい。」



声色を低くしてクイッと引っ張られる。

言い忘れていたが、ニコラの首には首輪のようなチョーカーが付けられており。
それは、主・ジランドの意のままに操られてしまうという。



「だだだっ、絞まる絞まる!引っ張らないで引っ張らないで!」
「てめぇが話しを聞かねぇからだろ。」



ようやく気付いて、慌てて正気に戻ればバタバタとギブアップを宣言する。
急に呼吸を奪われた気になり、ぜぇぜぇと息を整えながらキッと睨みつけた。
(どうせ、意味なんてないんだろうけど。)



「…はぁ。…で、なん、ですか…?」
「いつまでやってんだ。」

「あ、すみません。色々掃除してたらまだ掛かりそうで…。」



『ここって、結構広いですよね。』と笑いかけながら、メモを取り出す。
線で消されているものは多くあるが、まだ半分近く残っていた。

やはり与えられた仕事であるから、懸命にやりたくて。



「今日はもういい。片付けておけ。」
「は、い?」



ジランドさんの言葉に、思わず首をかしげた。



「ニコラに任せる仕事がある。早くしろ。」
「あ…はいっ!」



ぱあっと明るくなって、掃除道具を持ったままジランドさんの後ろについて歩く。
今の彼女に尻尾があるならば、まるで上機嫌を露に振っていただろう。

嬉しそうに歩いていると、ぐしゃぐしゃと撫で回された。





Place to stay
(ジランドさん!お仕事って何ですか…あだだっ。)
(少しは黙ってろ。)
(私、頑張りますからね!)