ココア・ホット・ココロ
寒い場所に、あったかいココアを。
そうすれば、ココロまであったかくなる。
いつもこの旅客船は氷のように冷たいけど、
今日はいつも以上に寒かった。
「…寒っ…。」
人が少ないからか、余計に寒々としてて。
元々寒いところも暑いところもダメなニコラにとっては今日はホント寒い。
寒さが限界がきて、向かった先は厨房。
厨房に入れば、十分すぎる機材が揃っているが彼女が手に取ったのは一般家庭で使われる。
ものの数分で出来たのは、ホットココア。
甘めじゃなくて、ほんのりくらいでやや濃いめ。
自分用にと貰ったカップに注いで、広い食堂でぽつりと椅子に座る。
好きな味でもあるのでスッと飲むと落ち着く。
「あったかい…。落ち着くわ…。」
「何をしている。ニコラ。」
声が聞こえてくるりと振り向くと、ジランドさんの姿。
どうして此処に居たんだろうって思いながら、
「あ、ジランドさん。ちょっとぬくりたくて。」
『此処、寒いですし』と付け足してまた口に付ける。
一応寒くはならないようにそれなりに着てはいるのだけど。
大事にカップを持ちながら、ジランドさんに近寄ると。
「…少し寄越せ。」
「あ…。」
急にカップを取られてそのまま飲んでしまうと、急に顔を赤らめた。
(だ、だって、これって、かか、間接キスじゃない…!)
「甘いな…、…おい。」
「は、はいっ?」
心地よい声のはずなのに、びくっと震えて思わず構えてしまう。
すると、奪われたカップをずいっと差し出される。
「…これと同じ物を作って来い。」
「……え?」
彼の、ジランドさんの言葉に、構えていたのに呆気なく崩された感じで。
思わず構えたときじゃない、素の反応が出た。
「聞こえなかったのか?ニコラ。」
「い、いえっ。聞いてましたよ…?」
「だったら作って来い。今すぐにだ。」
てっきり、珈琲のようなものが合うのかなとか思いつつ
やや濃いめのホットココア。
作って差し出すと、彼の表情に思わずどくんと鼓動が鳴った。
ココア・ホット・ココロ
(相変わらず甘いな。ガキかてめぇは。)
(甘い物好きだからってガキはないでしょ。)